エリック・ボンパール杯の結果の扱いのむずかしさ
今注目されているのは、エリック・ボンパール杯の結果をどうするのか、ということです。この大会は、世界6カ国で行われるグランプリシリーズ6戦のうちの4大会目でした。グランプリシリーズでは、その最終順位をポイント化して(1位は15ポイント、2位は13ポイントなど)、各選手が出場した最大2大会のポイントを合計した数字の、大きい方から6名(組)が、12月10日からのグランプリファイナル(スペイン・バルセロナ)に進出できることになります。そのため、6大会それぞれの最終順位というものが、とても重要になっているのです。
ところが、エリック・ボンパール杯では、ショートプログラム、ショートダンスまでで大会が中止になってしまったので、最終順位をどう定義するのか、そして、グランプリファイナルへの進出基準をどうするのか、ということが今注目されています。
この大会には、グランプリファイナルに進出できる可能性のある選手が何人も出場していました。その中には、ショート終了段階での順位が低い選手もいます。
たとえば、男子シングルだとパトリック・チャン(スケートカナダ1位)は5位、マックス・アーロン(スケートアメリカ1位)は7位。女子シングルでは、エリザベータ・トゥクタミシェワ(スケートカナダ2位)は5位。ペアのエフゲニア・タラソワ&ウラジミール・モロゾフ(スケートカナダ2位)は7位となっています。
また、村上大介選手はスケートカナダで3位なので、この大会の結果によってグランプリファイナル進出が可能なところにいます。
こうした選手たちがフリーで巻き返したら……と考えると、ショートでの順位を最終順位にする、と簡単には決めきれない状況なのです。
これまで、グランプリシリーズは中止になったことはありませんでした。ただ、世界選手権は何度か中止されてきました。
第一次世界大戦の影響があった時期(1915~1921年)と第二次世界大戦の影響があった時期(1940~1946年)、そしてアメリカ代表選手や関係者らが乗っていた飛行機に事故があった年(1961年)の計15回、中止になっています。
また、2011年3月、東京で開催される予定だった世界選手権が、直前の東日本大震災の影響で別の国での開催となり、代替開催地として名乗り出たロシア・モスクワで約1か月後に開催された、という例はあります。
世界選手権はシーズン最後の大きな大会なので、次の大会に大きく影響することがありません。ですが今回は、エリック・ボンパール杯の結果次第で、グランプリファイナルの出場者が変わってきます。そういったこともあって、現在ISUも苦慮しているところなのだと思いますが、結論が出るまでにはもう少し時間がかかりそうです。
すべての選手がフェアな状況になるように、というのはなかなか難しいのかもしれませんが、少しでもいい方法が発表されることを願っています。そして、エリック・ボンパール杯に出場した選手たちが、今後も臆せず自信にあふれた演技ができるよう、見守っていきたいと思います。
今週末には、グランプリシリーズ5戦目のカップ・オブ・ロシア(ロシア・モスクワ)が開催されます。6戦目は長野でのNHK杯。これからも胸が熱くなるような演技を見つづけていきたい、月並みですが、そのためには平和が欠かせないのだと感じました。