興行重視がプレミアの監督を高齢化させる
スペイン、ドイツとは対照的なのがプレミアリーグだ。■プレミアリーグの監督事情(20チーム)
30代:3人
40代:5人
50代:7人
60代:5人
平均年齢:50.8歳
資金力豊かなクラブがしのぎを削るプレミアリーグでは、クラブのオーナーが巨額の投資に見合った結果を求める。若い監督を育てている時間的余裕はなく、経験と実績を持った監督が好まれる。50代、60代の監督が半数以上を占めるのはそのためで、各クラブは外国人監督を積極的に招へいする。
昨シーズン優勝のチェルシーはジョゼ・モウリーニョ(52歳、ポルトガル)、同2位のマンチェスター・シティはマヌエル・ペジェグリーノ(61歳、チリ)、同3位のアーセナルはアーセン・ベンゲル(65歳、フランス)、同4位のマンチェスター・ユナイテッドはルイ・ファンハール(64歳、オランダ)と、上位チームの指揮官はほぼ例外なく外国出身だ。先ごろリバプールの新監督に就任したユルゲン・クロップも、48歳のドイツ人である。
平均年齢が高いのは、セリエAにも共通する。
■セリエAの監督事情(20チーム)
30代:1人
40代:6人
50代:10人
60代:3人
平均年齢:52.5歳
試合内容よりも結果を重視するサッカー文化の影響もあり、イタリアでも経験を持った指導者に人気が集まる。ただし、外国人監督にためらいなく声をかけるプレミアリーグのクラブとは異なり、セリエAはイタリア人監督が圧倒的に多い。外国出身の監督が束ねるクラブは、ルディ・ガルシア(51歳、フランス)のローマ、パウロ・ソウザ(45歳、ポルトガル)のフィオレンティーナ、シニシャ・ミハイロビッチ(46歳、セルビア)のACミランだけだ。
もっとも、近年のセリエAは欧州の舞台で苦戦が続いている。ディフェンスの方法論は伝統的に高いものの、戦術的なトレンドでは最先端から遅れを取っているのかもしれない。
さらにもうひとつ、リーグを紹介したい。日本のライバルの現状も知っておくべきだろう。
■韓国Kリーグの監督事情(12チーム)
40代:9人
50代:3人
平均年齢:46.3歳
40代の監督の9人のうち、8人までが45歳以下だ。かつてJリーグでプレーした人材も4人いる。また、外国人監督はひとりもいない。11チームで構成される2部リーグも、実に10人が韓国人である。
自国の監督へのこだわりは強いが、国際的な実績はあげている。アジアのクラブナンバー1を決めるチャンピオンズリーグでは、日本のJリーグ、中国のCリーグのクラブと互角以上の戦いを繰り広げている。
改めて、Jリーグの監督を考える
話をJリーグに戻そう。欧州サッカーをリードするリーガ・エスパニョーラとブンデスリーガだけでなく、韓国との比較でもJリーグは監督の平均年齢が高い。換言すれば、若い監督の将来性や可能性よりも、実績のある監督の安定感を買うクラブが多い。それが悪いとは言わない。J1リーグに居続けることは経営安定化の大前提で、大胆なチャレンジが避けられないクラブもある。
だが、このままでは選手層ならぬ「指導者層」が厚くなっていかない。そして、日本代表の監督を外国人に頼る流れが続いていってしまう。監督が代わるたびに、目ざすサッカーが変わってしまう。
W杯に選手として出場した経験を持つ監督や、現役時代に欧州のクラブでプレーしたことのある監督も登場しているのだ。次世代の監督に賭けてみるクラブが、もっともっと現われてほしい。それはまた、停滞感の漂うJリーグの人気回復にもつながるはずである。監督の知名度が対外的な訴求力となり、安定した人気を保つ要因となるのは、プロ野球が教えてくれている。