マイナンバー導入は日本版カジノから富裕層を奪う(画像は内閣府HPより)
情報流出のリスク
すでに番号の配布が始まったマイナンバー制度。「国民総背番号制」とも言われる国民管理システムは行政処理の簡素化が目的とされるが、国民のプライベートが丸裸にされる恐れが指摘されている。この制度について、新聞やテレビなどのアンケート調査では約8割が「導入に不安を感じている」と回答。
近年、日本年金機構のずさんな管理により年金番号が流出するなど重大な問題が起きていることから、マイナンバーにおいても同様の人的リスクは否定できない中、このシステムが国民のプライベートまでを一括管理することは更なる不安を与えている。
口座を介さない取引を助長する恐れ
そんな中でも、新たなリスクと言われるのが、近く、マイナンバーで銀行口座も管理されるようになることだ。これは国民一人ひとりのお金の出入りをガラス張りにすることで脱税を防ぐという名目だが、それが実は逆効果になりかねないことに政府自身が気づいていない恐れがある。
それは口座を介さない不正な取引の助長だ。
不正発覚を避けようと、不透明な金ほどますます口座を介さず現金で取引されかねないからだ。
そもそも口座で足がつくようなのは小さな脱税に過ぎない。目先の監視を厳しくしても、チェックできるのはしょせん「小悪」に限られ、本当に取り締まらなければならない「巨悪」ほど取り逃すという本末転倒な結果を招きかねないのだ。
矛盾する2つの政策
さらにもう一つ、マイナンバー制度によって深刻な弊害を生みそうなものがある。メディア等も全くこれに触れないし、政府自身も気づいていないのではないかと思われるものだが、それは現在計画中の「統合型リゾート」である。
統合型リゾート(IR:Integrated Resort)とは、ショーあり、ホテルや食あり、ビジネスコンベンションありという大規模なリゾート施設を指すが、その中心をなすのが「カジノ」である。
統合型リゾートもマイナンバーも同じ日本政府が推進している事業だが、結論から言えば、マイナンバーは日本人富裕層をカジノに来させなくしてしまうのだ。
富裕層のお金がますます国外に流出する
アメリカの例を見てみよう。カジノ先進国アメリカでは、近年、国内のカジノに行く富裕層が減少し、経営に甚大な影響が出ているが、これも実はマイナンバー式の国民管理システムが導入されたことがきっかけである。
お金のやりとりがガラス張りにされることを恐れた富裕層が、アメリカのカジノを避け、行き先を国外に変えてしまったのである。
つまり、管理を厳しくすればするほど富裕層のお金は国外流出することはすでに明らかとなっており、同様のことが日本でも起きる可能性がある。
富裕層のお金を回収し循環する機能が失われる
カジノはギャンブル場には違いないが、経済的な視点から言えば、富裕層からお金を回収し、他の事業に回したり税金や福祉に充当する役割も担っている。すなわち「富裕層のお金を社会に再分配する機能」だ。
いいか悪いかではなく、カジノとはそういうものであり、富裕層にお金を使ってもらうことが経営の生命線である。ところがマイナンバーによって資金の出入りを監視されるため、日本人富裕層が日本のカジノに足を向けなくなってしまうのだ。
過剰な監視は逆効果をもたらしかねない
あくまで現実問題として言えば、富裕層が遊興に使う金はあくまで「浮いているお金」、いわば巨額なタンス預金のような場合が多いが、それをカジノに持ち込むのはプライベートが守られるのが前提だからである。だが、日本のカジノではマネーロンダリングなどの犯罪行為を防止するため、大きなお金の出所にはとりわけ厳しい目が向けられる方針で、そこにさらにマイナンバーによる口座監視が加われば、誰もそんなところでお金を使おうとは思わない。
買い物をする際、払おうとしたお金の出所についていちいち聞かれるような店には行きたくないのと同じである。
過ぎたるはなお及ばざるが如しで、すべてをガラス張りにし、国が一括管理しようとする過剰な監視システムは、大きな不正をかえって見えにくくさせるばかりか、富裕層のお金が国内で循環するのを妨げるなど、逆効果を生むのである。