温泉のシンボルは365段の石段街
伊香保は今から400年以上前に、山の傾斜地を利用して温泉街が形成されました。温泉街への入り口としてつくられた石段は全部で365段あり、香川の金毘羅宮や山形の立石寺と並び “日本三大石段” のひとつでもあるそうです。もちろん階段を登らなくても上の方まで車で行ける道路も整備されていますが、やっぱり伊香保に来たら、石段から周辺の景色を見ながら、ゆっくりと散策するのも旅のひとつの楽しみです。早速、温泉街のシンボル・石段の下から伊香保散策をスタートしましょう。ここはちょっとした広場になっていて、山の上から源泉が流れてくる「湯滝」が、石段に沿って設けられており、立ちのぼる湯気が「温泉に来たなぁ~」という気分を盛り上げてくれます。
あたたかそうな湯気をあげる「湯滝」にそって石段を上り、その先にある関所跡や、立ち寄り湯などを目指しましょう。
伊香保には「黄金(こがね)の湯」と「白銀(しろがね)の湯」の二つの種類の温泉があります。もともと伊香保の温泉は、茶褐色の「黄金の湯」だけでした。このお湯は、中に含まれる鉄分が酸化して独特の色になるため、「黄金の湯」と呼ばれるようになったそうです。刺激の少ないやわらかいお湯で、身体を芯から温めて血行を促すので、特に江戸時代から女性には "子宝の湯" として喜ばれてきたそうです。また神経痛、筋肉痛、関節痛、冷え性、きりきず、やけど、動脈硬化症、慢性皮膚病など、病気やケガの療養に良いということで、昔から湯治場として人気を博していました。
また近年、新たに無色透明のお湯も確認され、「白銀の湯」の名前で親しまれています。このお湯は特に病後の回復に効果があると言われていて、疲労回復などにも良い湯として知られています。
石段にちなんだものと言えば、伊香保のマスコット「石段くん」です。顔が温泉まんじゅう、頭には温泉マークのついた風呂桶型の帽子、ボディーは365と記された石段で、てぬぐいをスカーフにした姿が特徴です。全身が温泉モードの「石段くん」は、伊香保温泉の観光宣伝隊長として、様々なイベントなどで活躍しています。
石段は“違う意味でも”足元に注意!
まるで天まで続くような長い階段のため、“あとどれくらいで山頂かしら……” と、上の方ばかり気になるかもしれませんが、足元にも注目してください。よ~く見ると、ところどころに犬や牛など、十二支にちなんだプレートが埋め込まれています。これは、昔あった温泉旅館跡に設置されたもので、石段街には200年以上前に大家(おおや)と呼ばれた12の温泉宿があり、干支はそれぞれの宿の家紋のような意味合いを持っていたそうです。現在も営業する宿もあれば、すでに無くなってしまった宿もありますが、石段には宿のあった場所を記すように、どこかに十二支が隠れているという訳です。また、階段部分には、詩人・与謝野晶子が詠んだ詩などが刻まれているほか、「小満口(こまぐち)」と呼ばれる窓が開いていて、そこからは山頂の湯元から流れてくる源泉を見ることができます。石段街には全部で4つの小満口があり、お湯が中を流れていく様子を見ることが出来ます。
実は伊香保が温泉まんじゅう発祥の地
温泉に行ったら、定番のお土産としてやっぱり温泉まんじゅうは外せません。今では当たり前のように全国の温泉地で売られていますが、その発祥地が伊香保だと、地元の人が教えてくれました。伊香保の茶色いお湯や湯花をイメージして作られたそうで、伊香保では “湯乃花まんじゅう” と呼ばれています。この湯の花まんじゅうは天皇家への献上品に選ばれたのがきっかけで、全国に知れ渡るようになりました。温泉街を散策していると、温泉まんじゅうを蒸す白い蒸気が、独特の風情を醸し出しています。
また、もうひとつの伊香保発祥が “温泉タオル” です。お湯が茶色い伊香保では、昔はお風呂で使う “てぬぐい” が、薄く茶色になってしまったそうで、地元の人の話では、この色のついた “てぬぐい” が「伊香保に行った」という証になり、ちょっとしたステータスだったそうです。現在では旅館で1人に1枚、新しいタオルが用意されていますが、このサービスを最初に始めたのが伊香保だと言われています。
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