ヨーロッパ

サラエボ観光の魅力と注意点について(2ページ目)

戦後ヨーロッパ最大の紛争となったボスニア・ヘルツェゴビナの内戦終結から約15年。かつて銃弾と悲鳴が飛び交っていたサラエボの街は落ち着きを取り戻し、ヨーロッパをはじめ世界各国からの観光客が訪れるようになりました。イスラム圏とヨーロッパ文化の混ざり合う文明の十字路、エキゾチックなボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボの街を訪ねてみましょう。

中原 健一郎

執筆者:中原 健一郎

海外旅行ガイド

観光の基点はバシュチャルシア

観光地化が進むバシュチャルシア。お土産を探しつつ楽しい散策を

観光地化が進むバシュチャルシア。お土産を探しつつ楽しい散策を

市内に着いたらバシュチャルシァ(旧市街)を目指しましょう。両替所やATMはこの周辺に多くあります。特に両替所は、まずこの辺りでしか見かけることはありません。バシュチャルシァは、市街とは雰囲気がうって変わって古い町並みの中にモスク、教会、シナゴーグなどが建ち並び、レストランや土産物屋が軒を連ねています。

これだけ多様な宗教施設が一堂に会しているのは、多民族国家ボスニア・ヘルツェゴビナを象徴する景観と言えるでしょう。

ボスニア・ヘルツェゴビナ観光局サイト、サラエボのページはこちら


サラエボのシンボルでもあるセビリ(水飲み場)

サラエボのシンボルでもあるセビリ(水飲み場)

中心部にあるセビリ(水飲み場)は必見です。いつも大量のハトがいて近づきにくいですが、どんな紹介文にも登場するサラエボのシンボルです!

セビリの位置はこちら

また、ボスニア・ヘルツェゴビナで最も格式があり、重要な礼拝所となっているガジ・フスレフ・ベイ・モスクは是非見学させてもらいましょう。代表的なオスマン建築の美しいモスクです。

ガジ・フスレフ・ベイ・モスクのウィキペディア紹介ページはこちら

サラエボ事件の舞台、ラテン橋

サラエボ事件の現場としてあまりにも有名なラテン橋は今日も健在

サラエボ事件の現場としてあまりにも有名なラテン橋は今日も健在

ぜひ訪れたい歴史の舞台といえば、このラテン橋。1914年6月28日、サラエボを視察中のオーストリア皇太子が夫人とともにセルビア人青年によって暗殺され、世界は第一次世界大戦へと突き進むことになりました。その戦死者は約1000万人、戦傷者は約2000万人にのぼります。

ラテン橋の位置はこちら

実際の現場は、橋の上ではなくたもとのあたりで、現在はサラエボ博物館が建っています。館内には実行犯の使ったピストルなど、事件の遺留品も多く展示されています。

サラエボ博物館のホームページはこちら

サラエボ博物館には実行犯プリンツィプの使用した拳銃も

サラエボ博物館には実行犯プリンツィプの使用した拳銃も

余談ですが、悲劇の皇太子フランツ・フェルディナントは若き日に明治時代の日本を約1ヶ月に渡って長崎から横浜まで旅行していて、旅行記も書き残しています。特に、献身的で控えめでチャーミングな日本女性を、非常に好意的に描写しています。

オーストリア皇太子の旅行記はこちら(講談社のサイト)

 

内戦の爪痕が残る市内

砲弾の痕が今なお残るサラエボ市内の家々

砲弾の痕が今なお残るサラエボ市内の家々

市内には内戦の弾痕が今だ残る建物が多くあり、紛争の凄まじさを物語っています。かつて「スナイパー通り」とまで呼ばれた大通りでは、セルビア人スナイパーによって数多くの人たちが標的となりました。

スナイパー通りの位置はこちら

往時なら、100%命を失うことになった場所です。歩いていても、決して楽しくはありません。それでも、我々がこの町を「観光」する資格があるとすれば、こういった場所をあえて避けず、戦争を直視する心構えが必要なのではないかと思います。

街を俯瞰してみると

サラエボ全景。紛争犠牲者の墓標はまだ新しい。左側の山の方はもうスルプスカ共和国

サラエボ全景。紛争犠牲者の墓標はまだ新しい……左手の山の方はもうスルプスカ共和国

セビリ正面のトラム乗り場から、セビリを背にして右斜め前の細い道を10分ほど登っていくと、町全体を俯瞰できる小高い丘があります。ここからの眺めは値千金! サラエボの町が手に取るように分かります。

丘の位置はこちら 

壮大な眺めに時を忘れていると、遠くのモスクのスピーカーからアッザーン(イスラム教の礼拝の時間を知らせる呼び声)の調べが聞こえてきたりします。

バシュチャルシア内にあるカトリックの大聖堂。クロアチア人たちの集いの場所

バシュチャルシア内にあるカトリックの大聖堂。クロアチア人たちの集いの場所

キリスト教徒であるクロアチア人や対岸のセルビア人はこの調べをどう聞いているのでしょうか。民族共生の難しさを改めて考えさせられる一幕です。

 

料理はトルコ風

ボスニアの名物料理、ドルマ。ぎゅっと詰め込まれた肉汁の旨みをタマネギと供に

ボスニアの名物料理、ドルマ。ぎゅっと詰め込まれた肉汁の旨みをタマネギと供に

長年トルコの支配下にあったボスニアでは、内陸国ということもあり肉料理を中心としたトルコ風のメニューが主流です。どこの店にも鉄板があり、ハンバーグやウインナー風の肉を焼いているのを目にすることができるでしょう。これを、パンと一緒に(挟んで)食べるのがボスニア流。ちょっとした腹ごなしのつもりでもけっこう満腹になってしまいます。

おすすめはドルマと呼ばれる肉詰め料理。挽肉をタマネギなどの野菜に詰めてやわらかく煮込んであります。パンもよいですが、ご飯との相性も抜群です。

次ページは、人気のボスニア鉄道について!


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