ヨーロッパの旅は鉄道

アルプスの名峰をバックに、インスブルック駅(オーストリア)で出発を待つドイツ鉄道の客車。ヨーロッパの旅は鉄道がおすすめ。

アルプスの名峰をバックに、インスブルック駅(オーストリア)で出発を待つドイツ鉄道の客車。ヨーロッパの旅は鉄道がおすすめ!

ヨーロッパを旅するのに最良の交通機関は何かと聞かれたら、10人中10人が鉄道と答えるのではないでしょうか。ヨーロッパは鉄道網が非常に発達しており、普通の列車のみならず、数々の高速鉄道や観光列車が運行されています。飛行機も早くて便利ですが、ヨーロッパの風景を楽しみながら移動できる鉄道に勝る手段はないだろうと私も思います。

ユーレイルパスは28か国の鉄道に乗り放題、イギリスに注意

イタリアの国境駅で憩うフランスの高速鉄道TGV。パリから放射状に隣国へ路線を延ばしている。

イタリアの国境駅で憩うフランスの高速鉄道TGV。パリから放射状に隣国へ路線を延ばしている。

ユーレイルパスとは、ヨーロッパ以外に在住している人だけが購入することができ、ヨーロッパ28か国(もしくはその一部)の鉄道が乗り放題となるお得で便利な切符です。利用客のニーズに応じて様々なタイプがありますが、1等車用と2等車用があり、予算に応じて選ぶことができます。外国人向けの優待料金となっていますので、上手く使えばかなり費用を抑えながらヨーロッパの鉄道の旅を楽しむことができます!

利用範囲はほぼ全てのヨーロッパと言っても差し支えありませんので、逆にこのパスが使えない国を挙げておきましょう。

イギリス、バルト三国を含む旧ソ連の国々(エストニア、ラトビア、リトアニア、ロシア、ベラルーシ、ウクライナ、モルドバ)、マケドニア、アルバニア、コソボ、また鉄道がない国(アイスランド、マルタ、キプロス)
ロンドン・St Pancras駅で出発を待つユーロスター。海底トンネルを通ってパリまでわずか2時間半。ユーレイルパスで割引あり。

ロンドン・St Pancras駅で出発を待つユーロスター。海底トンネルを通ってパリまでわずか2時間半。ユーレイルパスで割引あり。

やはり注意すべきはイギリスです。鉄道発祥の地の矜持なのかもしれませんが、イギリスは鉄道王国ですのでやはり旅行者には残念なところです。ただし、パリ・ブリュッセルとロンドンを結ぶユーロスターには有効(割引あり)となっています。
スチーブンソンが製造したロコモーション1号。1825年9月27日、初の商用鉄道としてストックトン~ダーリントン間を走破した。その後百数十年での世界の鉄道の発達は驚異的なほどに目ざましい

スチーブンソンが製作したロコモーション1号。1825年9月27日、初の商用鉄道としてストックトン~ダーリントン間を走破した。その後の百数十年における世界の鉄道の進歩は目ざましい。

あと、意外なところでトルコがユーレイルパスを利用できます!

パスの種類1:グローバルパス

ユーレイルグローバルパスはヨーロッパ28か国の鉄道が乗り放題!

ユーレイルグローバルパスはヨーロッパ28か国の鉄道が乗り放題!

最も基本となるタイプで、有効期間中全ての国で乗り放題となるパスです。15日間用、22日間用、1・2・3か月間用があります。
参考価格 6万3000円前後(2等15日間)、17万円前後(2等3か月間)

パスの種類2:フレキシーパス

フレキシーパスはパスを利用する日にちを選べるタイプ

フレキシーパスはパスを利用する日にちを選べるタイプ

例えば上記のグローバルパス15日間を使って旅行をした場合、途中のパリで1日市内観光をするなど、列車に乗らない日があることの方が普通だと思います。この場合、グローバルパスですと1日ムダになってしまいますね。

フレキシーパスはパスを利用する日を自分で決めることができる便利なパスです。例えば5日間有効のパスなら、1/1、1/2、1/6、1/9、1/12といった具合に、列車を使わない日は避けて無駄なく使用することができます。ただし、その分お値段はちょっと高め。5・7・10・15日間用があります(5・7日間用は1か月間以内、10・15日間用は2か月以内に使用を終える必要があります)。

パスを使う日を予め決める必要はなく、当日乗車前にパスの券面上に自分で使用日の日付を記入します。例えば5日間用であればマス目が5つありますので、その中に使用日を記入していきます。未記入の状態で乗車したり、鉛筆で記入したりすると、怖~い罰金が待っています!

参考価格 4万9000円前後(2等5日間)、9万5000円前後(2等15日間)

パスの種類3:セレクトパス

セレクトパスはパスを利用できる国を選べるタイプ

セレクトパスはパスを利用できる国を選べるタイプ

はっきり言って、1回の旅行でヨーロッパ28か国全てを周る人なんてまずいません。セレクトパスは利用できる「国」を選べるタイプです。2か国用、3か国用、4か国用があり、選択する国は隣接していることが条件で、フレキシータイプのパスとなります。

料金は三段階あり、利用国の組み合わせによって料金が変わります。最も高い料金帯に属する国は、ドイツ、フランス、スイス、イタリア、オーストリアの5ヵ国です。また、「ベネルクス3国(ベルギー、オランダ、ルクセンブルク)」、「スロベニアとクロアチア」、「セルビアとモンテネグロ」はそれぞれ1か国としてカウントできるのでお得です。

参考価格 3万8000円前後(ドイツとフランス2等5日間)、5万5000円前後(ドイツとフランス2等10日間)

パスの種類4:セーバーパス

複数名で一緒に旅行する時は、セイバーパスがお得

複数名で一緒に旅行する時は、セーバーパスがお得

これは複数名が同一行動する場合に適用される、約15%割引のパスです。グローバルセーバー、フレキシーセーバー、セレクトセーバーなど上記のパスが割引になります。

欠点としては、例えば同行者の1人が「今日は調子悪いからホテルで休んでる~」なんて場合、同行者がパスを利用すれば、パス自体は1枚を複数名で共有しますので、(フレキシータイプの場合は)乗車していない人の分も含めて1日分カウントされてしまうことです。

パスの種類5:ユースパス

パスの使用開始時点で27才までの場合、ユースパスが利用できます。概ね20%割引となりますが、セーバーパスとの併用はできません。

パスの種類6:1か国パス

1つの国に限定して利用できるタイプで、多くの国が様々な独自のパスを発行しています。一般的に、その他のユーレイルパスよりも利用できる私鉄の数が多かったり、施設割引などの特典が充実していることが多いようです。

ユーレイルパスの使えないイギリスにも、ブリットレイルパスと呼ばれる1か国パスがあります。

買い方、使い方

パスの現地購入はできませんので、日本で買って持っていく必要があります。料金はどこで買っても概ね同じですが、多少の違いはあります。後述しますが、座席予約も一緒にできる代理店での購入が便利です。また、パスの送料が掛かる所もありますので、注意してください。
パスを利用する前にバリデーション手続きを忘れずに。エディンバラ、ウェーバリー駅の切符販売窓口。2018年、英国に日本製高速列車、「あづま(AZUMA)」が走り出す!

パスを利用する前にバリデーション手続きを忘れずに。写真はエディンバラ、ウェーバリー駅の切符販売窓口。2018年、英国に日本製高速列車、「あずま(AZUMA)」が走り出す!

現地に着いたら、使用開始前に「バリデーション」と呼ばれる使用開始手続きを窓口で行ってください。パスポートとパスを提示すると、券面上にスタンプが押され、使用可能な状態になります。この手続きをしないで乗車すると罰金となる他、バリデーション手続き後は、払い戻しはできません。

船も乗れます

ヘルシンキ港で出航を待つストックホルム行きの豪華フェリー。ユーレイルパスで割引がある。

ヘルシンキ港で出航を待つストックホルム行きの豪華フェリー。ユーレイルパスで割引がある。

ユーレイルパスは国際航路を含む加盟国の多くの船にも有効です(割引も含む)。特にイタリア・ギリシャ間、北欧各国間などは利用価値が高いはずです。個人的なオススメはフィンランドのヘルシンキからスウェーデンのストックホルム間。陸路で行こうとするとボスニア湾をぐるっと迂回しなければたどり着けませんので、夕方出て翌午前に着く航路が便利で快適です。まさに豪華客船と呼べるような大型船でクルーズを楽しめます。

対象航路についてはこちらを参照してください。


私鉄は基本的には乗れません

JAPAN RAIL PASSがJRしか使えないように、ユーレイルパスも各国の私鉄には基本的には乗車できません。ですが、実際には利用できる私鉄も少なからずあったりしますので一概には何とも言いづらいところです。また、各都市の地下鉄なども基本的に利用できません。
悪名高いパリの地下鉄。世界で一番スリの多い場所

悪名高いパリの地下鉄。世界で一番スリの多い場所。ユーレイルパスは使用不可。

例えばスイスの有名な「氷河特急」や「ベルニナエクスプレス」に乗車できる(ただし座席予約が必要)一方で、イタリアの私鉄高速鉄道「イタロ」などには乗車できません。利用可能な路線については同様に下記を参照してください。

ユーレイルパスで利用可能な私鉄
“世界一遅い特急列車”との愛称を持つ「氷河特急」。スイスアルプスの山の中を横断する絶景の旅。ユーレイルパスで乗車できる。

“世界一遅い特急列車”との愛称を持つ「氷河特急」。スイスアルプスの山の中を横断する絶景の旅。ユーレイルパスで乗車できる。


全席指定列車の場合、予約が必要です

TGVの1等座席。TGVは全席指定制のため、ユーレイルパス所持者でも座席予約が必要。

TGVの1等座席。TGVは全席指定制のため、ユーレイルパス所持者でも座席予約が必要。

ヨーロッパの列車は基本的に空いていて、どこでも座り放題で座席予約など全く必要ないという状態のことが多いのですが、それでも一部には全席指定の列車というのも存在します。具体的にはフランスのTGV、ユーロスター、タリス、イタリアのフレッチャ(ロッサ・ルジェント・ビアンカ)などの高速列車、多くの夜行列車(寝台は当然全て予約制です)、人気の高い観光列車などが該当します。
あるいは

人影もまばらな夜のアッシジ駅(イタリア)。ヨーロッパの列車は基本的に空いている。

これらの全席指定列車にユーレイルパスで乗車する場合には、駅の窓口で座席や寝台の指定予約が必要となります。料金は安ければ3ユーロくらい、高ければ数十(寝台ならそれ以上)ユーロが別途必要になります。ヨーロッパの高速鉄道料金はJRのように乗車券、特急券、指定券というような明確な区分はなく、「全部でいくら」という包括運賃と呼ばれる設定になっていますので、ユーレイルパスでこれらの列車を利用する場合は、座席指定料金が別途必要というよりは、パス所持者向けの割引料金があると考えた方が分かりやすいでしょう。
イタリアの高速鉄道フレッチャ・ロッサ(赤の矢)。フレッチャ・ルジェント(銀の矢)、フレッチャ・ビアンカ(白の矢)と共にイタリア各都市を縦横に結ぶ。

イタリアの高速鉄道フレッチャ・ロッサ(赤の矢)。フレッチャ・ルジェント(銀の矢)、フレッチャ・ビアンカ(白の矢)と共にイタリア各都市を縦横に結ぶ。


日本出発前に予約したい場合

そこで困るのが、行程上どうしても乗らなくてはならない全席指定列車がある場合です。現地に着いてから駅で予約したのでは満席になってしまうかもしれません。そんな時は日本から予約をすることも可能です。
座席予約も行うことのできる旅行代理店でパスを買うと便利

座席予約も行うことのできる旅行代理店でパスを買うと便利

ユーレイルパスを販売している旅行代理店の中には、座席予約もサービスとして行っているところがありますので、どうしても早めに予約したい列車がある場合には、座席指定もしてくれる代理店でパスを購入すると、いろいろ便宜を図ってくれるでしょう。ただし、座席指定料金の他に、代理店の予約手数料が掛かるのが通常です。

様々な特典や割引があります

ユーレイルパスにはレストランやホテルの割引も

ユーレイルパスにはレストランやホテルの割引も

ユーレイルパスには列車や船だけでなく、観光施設やレストラン、ホテル、現地ツアーなどの様々な割引特典が付いています。概ね10%~20%程度の割引が多いですが、もし自身のプランと合致すればさらにパスをお得に使うことができます。

割引の対象となる施設についてはこちらをごらんください。

どのくらい乗れば元が取れるのか

ヨーロッパで最も人気と言っても良い観光路線、ユングフラウ鉄道。ユーレイルパスで割引あり。写真はクライネシャイデック付近、名峰アイガーとメンヒをバックに。

ヨーロッパで最も人気と言っても良い観光路線、スイスのユングフラウ鉄道。ユーレイルパスで割引あり。写真はクライネシャイデック付近、名峰アイガーとメンヒをバックに。

パスを買って果たして元が取れるのかどうか?気になりますよね。その答えは普通の区間乗車券を買った場合と比べてみるしかありませんので、明らかに元が取れそう(取れなそう)な場合以外は割と地道な作業が必要になります。

実はヨーロッパの特急(に相当する)列車(通称ICと表記されるインターシティー、あるいは同等、もしくは格上の高速鉄道等)はインターネット等で早期に購入することによって、大幅な割引が受けられることが多々あります。残席数によって価格が変動するので、飛行機のLCCに近い感覚と言えるでしょう。3割4割は当たり前、半額以下のチケットだって決して珍しくありません(ただし、変更や払い戻しができないなどの制約が付くことがほとんどです)。JRと比べると割引のスケールが非常に大きいです。

一例として、パリからリヨン(約430キロ、所要2時間。おおよそ東京から米原間に相当)までのTGVを執筆時点の一か月後で検索してみました。2等のフレキシブル(払戻しや変更が自由)のチケットが最高値105ユーロに対して、制約付きの最安値の列車はなんと32ユーロ、しかも1等でも36ユーロという列車があります。それ以外の多くの列車でも2等が50ユーロ前後といったところでしょうか。
早朝のリヨン・パールデュ駅で出発を待つ始発のTGV。一般的に、利便性の低い時間の列車ほど、割引率が高い

早朝のリヨン・パールデュ駅で出発を待つ始発のTGV。一般的に、利便性の低い時間の列車ほど、割引率が高い。

これをユーレイルパスで乗車すると、どの列車でも1等2等共に10ユーロの追加料金で乗車することができます。パスのコストを仮に1日あたり50ユーロとすれば、元を取るのはそれほど難しい話ではないような気がします。

ただし、西ヨーロッパの中でも特に鉄道運賃が安いイタリアや、さらに東欧の方へ行けばもっと運賃が安いですので、元が取れるかどうかはまさにケースバイケースです。東京と新大阪を新幹線で往復しただけで1週間パス(29110円)の元が取れてしまいそうなJAPAN RAIL PASSほどのお得感は、正直なところユーレイルパスにはありません。
芸術の国イタリアでは列車はアーティスト?達から見れば走るキャンバス。技術の粋を集めた高速鉄道が哀れな姿に……

芸術の国イタリアでは、列車はアーティスト?達から見れば走るキャンバス。技術の粋を集めた高速鉄道が哀れな姿に……

私の本当にざっくりの目安ですが、1日の列車の乗車時間が3~4時間を超えるようなら、ユーレイルパスの購入を検討してみた方が良いのではないでしょうか。あとはネット上での予約に不安がある人や、風の吹くまま気の向くままに旅行をしたい人にはうってつけの手段だと思います。

夜行列車を活用しよう!

白のボディーに赤のライン、ドイツの高速鉄道ICE。実は夜行のICEも運行されている。

白のボディーに赤のライン、ドイツの高速鉄道ICE。実は夜行のICEも運行されている。

日本ではほとんど滅亡してしまった夜行列車が、ヨーロッパではたくさん運行されています。もしユーレイルパスを有効に活用しようと思ったら、この夜行列車を存分に利用することをオススメします!

実はユーレイルパスには夜行列車向けの特別ルールがあり、19時以降に出発する夜行列車に乗った場合、パスの利用日としては翌日の到着日のみカウントすれば良いことになっています。

例えばフレキシータイプのパスでパリ発ミュンヘン行きの夜行列車に乗った場合、パスに記入する日付はミュンヘンに到着する出発翌日の日付だけです。
寝ている間に目的地に着ける夜行列車。移動効率が良いだけでなく、旅情も深い優れた交通手段。

寝ている間に目的地に着ける夜行列車。移動効率が良いだけでなく、旅情も深い優れた交通手段。

寝台等を利用すれば当然別途料金が掛かりますが、夜行列車は長距離を走りますのであっという間に元が取れてしまいます(しかもホテル代も浮きます)。翌朝到着してそのまますぐ観光に出発できますし、移動の効率が極めて良いことは改めて言うまでもないでしょう。

いろいろ工夫することでユーレイルパスはさらにおトクになりますので、上手にプランを立てて有効利用してください。
※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。
※海外を訪れる際には最新情報の入手に努め、「外務省 海外安全ホームページ」を確認するなど、安全確保に十分注意を払ってください。