暮らしはその人自身を表わすこと
近年ライフスタイルを考える本や暮らしを楽しむ本が多く見受けられます。暮らし方について関心を持つ人が増えているのかも知れません。時代も成長時代から成熟していく時代に向かおうとしているわけですから、暮らし方を楽しんでこそ人生の質を高め豊かにしてくれるはずです。暮らし方を豊かにしてくれるもっとも重要なのはやはり住まいです。周囲の環境をとり入れながら住まいをどうつくり、どう暮らしていくかはその人自身を表わすものです。だからこそ自分なりの小さな核をつくりルールづくりをし、時間を味方にしながら生きていくことが大切だと思うのです。そのルールづくりの視点をご紹介します。
ルールづくりの視点
ルールづくりの視点を 10項目にまとめました。1.住まいの周囲を楽しむ
気に入った環境でその地に住み始めたわけです。近くの公園、大きな木など散歩しながら心が落ち着くところを探しておきます。暮らしを楽しむには住まいの外にも見つけておきましょう。
2.時間をかけてつくりあげる
人工的な建材ばかりでなく、使い込んでいくことで材料が輝きを増す素材も取り入れることです。
3.スタイルの核をつくる
テーブルや椅子、照明など自分のスタイルを決めておくことで自分のイメージする暮らしに近づいていけるのです。
4.100%の完璧は求めない
こだわる部分(主役)、そうでない部分(脇役)、そしてインテリア小物など、常に全体のバランスをどう保っていくかが大切です。けっして100%の完璧は求めないことです。
5.自分で工夫していく
「ものや暮らしはこうでなくてはならない」という思い込みは捨てて、自分流にアレンジし、ものの新しい可能性を発見していくことも暮らしを楽しむひとつです。
ある時はひとつ足して、又引いてとくり返し行うことでも良いのです。
6.ライフスタイルに合わせて
安かったから、とても素敵だったからといって衝動買いしてしまうことがあります。買う前に一瞬立ち止まり、自分の暮らしに合うかどうか自問自答して下さい。
本当に必要なものを選択していくことで空間はより魅力的になっていくのです。
7.ものは増やさない
自分にとっての適切な量を知り、管理できる量を把握しておくことです。仮に1つ購入したら1つ捨てるといった気持ちを持ち続けていくことです。
8.メンテナンスを楽しむ
床や壁、タイルの目地など傷がついたり剥がれることがあります。自分でできる範囲のものは自分で修復することです。手を加えることで愛着がわいてくるからです。
9.古いものの価値を大切に
時間を経たものには落ち着いた味わいや雰囲気があります。それだけでも空間にインパクトを与えます。古いものを置いて価値を見直すことも暮らしを楽しむコツです。
10.暮らしに「美」をつくる
生活は機能的であることが求められますが、同時にどこか美があることも重要です。美しいものを目にしたり手で触ったりすることで心に潤いをつくってくれます。
時間を経たものは落ち着いた味わいや雰囲気を空間にもたらします。
ガイド佐川旭のメッセージ
日本人の家を建てる平均年齢は38.8歳です。丁度人間的にさまざまな影響を受けながら深みをつくっていく時期でもあります。さらに自分の生活スタイルも見え始めている頃でもあります。そういった年齢にメディアや流行に踊らされることなく自分の生活スタイル基準をつくっていくことです。人間は生活に楽しむために働き、そして家を建てるのです。しかし、まだまだ生活を楽しむというより、寝に帰るだけの生活という人もたくさんいます。もっとボンヤリと「すごす時間」を楽しむことを意識してはどうでしょう。デジタルで刻む時間ではなくすごす時間です。
すごす時間というのは急にできるものではなく、ルールづくりの視点をとり入れながらつくりあげていかなければなりません。ここでいうすごす時間というのは単に時間の使い方ではなく室内空間や室礼(しつらい)の意味も含めて表現しています。