器量って何?
器量という意味を辞典で調べると、「器」は才能のあること、「量」は心の大きさ、徳のあること、さらに女性については容貌(ようぼう)、顔立ち、と書かれ器量好みは顔立ちの美しい女性をえり好みすること、と説明されています。つまり器量という言葉は器と量の2つで、人間そして社会を測る尺度として使われてきたのです。しかしこの2つがバラバラになると、人間や社会を測る尺度も変わってくるのです。これは住まいにも当てはまるのではないでしょうか?
「器」と「量」を離さないこと
器と量はハードとソフトの関係にあります。家で言えば外と内です。これがそれぞれ分離されると、それぞれが単体で考えなくてはなりません。たとえば器だけで考えると、才能はあるけど気配りや心遣いはどうだろう、といったことや、外観は確かに耐候性やメンテナンス的にはよいが、味わいのない無機質な感じかなといった具合です。つまり器や外の仕上げのもつ機能だけで考えなくてはならず、量で考える視点が抜けおちていくのです。大げさに言うと文化の形も変るということです。これは言葉の持つ力ともいえるかも知れません。
器と量を離さないデザインを考える
住まいは室内の省エネや性能性を求めることも大切ですが、外観としての器と量を離さない家づくりも重要です。その離さないデザインとは、又器量の良いデザインを考えてみます。工夫その1 … 軒下を活かす
余計に屋根をかけてスペースに余白をつくることで内外空間にホッとさせるたまりの表情をかもしだしてくれます。
工夫その2 … 木製屋根のカーポート
折角外観をきれいにつくっても後でアルミのカーポートの屋根をつくると、なぜかアンバランスで外観の表情が画一的で均質になります。
木製屋根のカーポートでオリジナルを演出して下さい。
工夫その3 … ルーバーを活かす
ベランダの手すりや一部外壁などにルーバーを使って印象的でメリハリのある外観にします。さらに室内には陰影のある光をリズミカルに届けます。
工夫その4 … 門扉と塀のデザイン
新築時は予算も限られているので門扉や塀にはあまり予算がかけられないかも知れません。しかし門扉や塀、アプローチ、植栽によって外観の器量の良さはかなり違ってきます。もちろん玄関までの心構えもつくってくれます。
工夫その5 … 窓と庭の明かり
夜窓からあふれる明かりは帰ってくる人にとってとてもホッとさせるものです。室内の窓は彩光、通風と同時に夜の明かりも意識して形や大きさを考えなくてはなりません。
窓からあふれる光は、中で家族が待っているという安心感につながります。
工夫その6 … 仕上げで印象を変える
金属系サイディング、窯業系サイディング、塗壁など仕上げによって印象はかなり違います。単に性能ばかりではなくデザインも含めて感性を感じさせる仕上げを選択することです。外観の印象は室内の仕上げにも連動していくのです。
工夫その7 … 室外機、引き込み線、ガスメーターの場所
玄関の近くに引き込み線やガスメーター、水道メーター、と意外に忘れがちがちです。しっかりと図面で確認しておくことです。器量の良くない玄関まわりが出来上がってしまいます。
玄関ポーチに升がきてしまった例です。
眺められる家でありたい
眺めるというのは、今ここに居ること、そして存在の感覚を鋭くしてくれるものです。我が家を外から眺める、あるいは窓から外を眺める。人々の暮らしはそうしたながめの上に成り立っているのです。外部空間を器とすれば内部空間は量。これらが「一」になることを目指すことです。言葉のもつ意味は大きい。それは人間の考え方や尺度、そして価値観も変わっていくからです。器量のある家づくりというキーワードであらためて住まいの豊かさを考えてほしいと思います。