住まいの重要な「場」は居間
住まいづくりは「場」をつくることです。 「場」という言葉は大事な状況を表す言葉として、また社会において人と人との係わりの要をなす時間や空間をさす言葉として使われてきました。住まいの中でもっとも重要な「場」は居間といえるでしょう。 台所、寝室、トイレなど目的をもった部屋に対して、居間は明確な目的を持っていない空間です。それなのに設計をする際、一番初めに考えるのは居間の配置であることが多いのです。
これは、家族という共同体の絆となっているのは料理をすることや寝ることではなく、家族それぞれが行う行為そのものだからです。居間は、その複合体がみられる場であるから重要なのです。
そんな居間の設計はどのように考えればよいのでしょうか?
居間を考える
より良い居間をつくる上で検討する項目は次の5項目です。1.室内気候
陽当りがよくて風通しもあり、自然の恵みをできる限りとり入れ、人工的な気候
調節も居間を最重要として考えることです。
2.居間の位置
「居間を中心に置くこと」をどう考えるかが大切です。これは間取りの中心にするというのではなく、心理的な中心になるように配置することです。たとえば、玄関からは他の部屋を通らないで出入りができ、他の個室から容易に出入りができるといった配慮も必要です。ただし出入口ばかりに配慮すると、壁がなくなり落ち着いた雰囲気が失われるので注意しましょう。
3.居間の広さ
広ければよいというものでもありません。広さは心理的なもので、窓の位置や天井の高さ、インテリアのつくり方によって、同じ面積でも狭く感じたり広く感じたりします。具体的に〇平米とは言えないので、家族に2~3人の友人が加わった時と、夫婦2人で静かにすごす時をイメージして広さを決めていくことがポイントです。
4.設備・装置はどうする
テレビやオーディオ装置は、その置き方を十分に検討しましょう。大画面のテレビが部屋の中央にドーンと鎮座するようなレイアウトは避けることです。さらに本棚、パソコン、家族のスケジュール表、共有の机などをどう配置するのかもしっかりと計画することです。
5.時間を味方にする
これは設計というより住まい方の問題です。居間では無為(むい・何もしないこと)の時間をすごすことが多いのですが、その無為が充実し蓄積していくことが大切です。たとえば自分を深めてくれ感受性を与えてくれる音楽を聴くことができるようにレコード・ビデオ・CDを置くなどです。
奥のキッチンと手前のタタミコーナーの真ん中に居間がある。居間を中心の場として動線が考えられている。
写真:(株)佐川旭建築研究所 設計
場という考え方を明確にする
居間は家族に開かれた場で居心地がよくなければ家族は集まりません。居心地がいいというのは、自然的条件や知的な要素の存在もなければなりません。我々は場という素的な言葉がありながら、住まいの中に家族の共同体を育む場を単にスペースの割り振りの様に考えがちです。場には逃げ場、見せ場、隠れ場、遊び場、土壇場など人生が見えてくる場面や人のありようを左右する言葉がたくさんあるのです。場という考え方を明確にすることは住まいづくりのヒントになるのではないでしょうか?