うなぎ/東京近郊のおすすめうなぎ店

関東うなぎ料理人の総本家「入谷鬼子母神門前のだや」

明治元年創業、関東のうなぎ料理人の総本家「野田屋東庖会」の直営店「のだや」。江戸の伝統を受け継ぐ職人集団が作りあげる伝統的なうな重をはじめとする、うなぎ創作料理は絶品。のだや流「匠の技」を堪能することができる。

山室 賢司

執筆者:山室 賢司

うなぎガイド

「のだや」が”関東のうなぎ料理人の総本家”と言われるワケ

メディアなどで多数取り上げられている「入谷鬼子母神門前のだや」は、最寄はメトロ日比谷線入谷駅で徒歩1分ほど、鶯谷駅からも歩いて5分、入谷鬼子母神の言問通りを挟んだ向かいにある。

「のだや」の歴史は1868年(明治元年)に創業した調理士会「野田屋東庖会」にまで遡る。「野田屋東庖会」とは川魚を中心とする日本料理調理のスペシャリストの団体。若手料理人を育成し、ここで職人技術を身につけた料理人達は有名うなぎ店にも多数勤務しているという。これが「関東のうなぎ料理人の総本家」と言われる所以だ。

1978年(昭和53年)「野田屋東庖会」の直営店を「のだや」の屋号で根岸に開業、一時休業の後、2013年2月当代店主江部さんの「うなぎ料理を途絶えさせてはならぬ」という思いで入谷鬼子母神門前にて再開業。「店は人である、源流でありながら進化し続けたい」という店主江部さんのお話には、プロ意識の中に鰻と人への愛情を感じる。
入谷鬼子母神門前のだや外観

入谷鬼子母神門前のだや外観


進化するうなぎ料理

白地に大きく「のだや」と書かれた暖簾をくぐると、女将さんが笑顔で迎えてくれる。店内は和風モダンな内装にスロージャズが静かに流れ、ゆったりとした時の流れを感じる。ゆっくりとグランドメニューに目を通すと、料理の写真も掲載されていて分かりやすく見ていて飽きない。

一品料理のページを見ると、うまき・うざくといった定番メニューはもちろんだがオリジナルのうなぎ創作料理もある。「うなぎとクリームチーズの酒盗あえ」(税抜1150円)をお願いする。シャキッとしたサラダの上に、鰻・クリームチーズそして鮪の酒盗。旨味のある鰻と濃厚なクリームチーズが口の中で広がり、横から鮪の酒盗のパンチが効く感じだ、日本酒が欲しくなる。うなぎ屋さんのメニューでは野菜が不足することが多いのだがサラダ系があるのはありがたい、女性にも人気なのだそうだ。
「うなぎとクリームチーズの酒盗あえ」

「うなぎとクリームチーズの酒盗あえ」


江戸の時代から「鰻屋の酒は旨い」と言われている

酒類のメニューも充実している。日本酒はもちろん、焼酎・ワインまでが揃い、うなぎに合う酒を職人達でセレクトしているのだそうだ。お好みを伝えてお店の人に相談すると青森の「陸奥八仙」をすすめていただいた。そして「名物うなぎの酢〆うら梅造り」(税抜1650円)を酒の肴にする、なんとも贅沢なひとときだ。
野田屋東庖会の「紋」である「裏梅の紋」をイメージして梅ソースも添えられ見た目はフレンチのようだ。生の鰻を秘伝の酢とタレでシメているのだそうだ。噛めば噛むほどに凝縮された鰻の旨味を楽しめる、ちょっと山葵を付けてもよし、梅ソースにサッとつけてもよし。ついつい日本酒をお代わりしてしまう、和歌山の「黒牛」をいただく。
「名物うなぎの酢〆うら梅造り」

「名物うなぎの酢〆うら梅造り」


うなぎ100%の焼売!?

職人集団が作り出す、うなぎ創作一品料理が凄い。一時、メニューから外れていた「うなぎ点心」が復活。「うなぎ焼売」と「うなぎ春巻き」があるのだが今回は「うなぎ焼売」(税抜1650円)をいただく。うなぎ100%の焼売とは、豚肉の代わりの鰻の身肉を使っていて、グリーンピースの代わりに鰻の短冊という、これまた贅沢な焼売だ。上等な脂ののった白身魚といった食感で、豚肉よりあっさりした感じだが淡泊な感じではない。薄めの皮とも相性がよく、そのまま食べても旨味が濃厚なのだがお好みで醤油か卓上に用意されているうなぎのタレをつけていただいてもよい。
うなぎ100%の「うなぎ焼売」

うなぎ100%の「うなぎ焼売」


旨い酒の後にはうな重でシメる

やはりうな重でシメたい。メディアで取り上げられているのは、うな肝があるときだけの限定品「きょうすいうな太郎」だ。きょうすい(共水)うなぎとは、大井川の幻のブランド鰻と言われ、養殖工程で天然に近い四季を作り出し低ストレスで飼育する。うなぎの持つ本来の甘みを、うなぎ自身の力で得ることができるようにすることで、身に甘みがあり、脂っぽくなくねっとりした食感になる。

うな重のラインナップも豊富だ。共水うなぎの白焼きと三河一色産のうな重の組み合わせ「のだや特選御膳」もいい、鰻と穴子の相乗り重「いとこ重」も気になる。岩塩でカリカリに焼き上げたという、ひつまぶしも捨てがたい。いやいや、ここは江戸時代からの匠の伝統技をシンプルにストレートに感じたい。三河一色産の厳選された新仔特大サイズ一匹を使用しているという「特選うぐいす」(税抜5000円)、これに決める。のだや流蒲焼は、焦げ目が無くふっくらしているのが特徴なのだそうだ。割き・串打ち・素焼き・蒸し・本焼きの各工程の繊細な技術の上に成り立つという。

「特選うぐいす」三河一色産の厳選された新仔特大サイズ一匹を使用

「特選うぐいす」三河一色産の厳選された新仔特大サイズ一匹を使用


「万遍返し」で焼き上げた匠のうなぎ

焦げ目がなく綺麗な黄金の飴色をしたうな重は、美しい。皮は薄く柔らかく、肉厚の身はフワッとトロッとした食感。脂のノリも良いが、くどすぎず、あっさりすぎず程よいボリューム感だ。タレはほんのり醤油系のあっさりサラッとしたタレ、鰻の甘み旨味を引き出すタレだ。ご飯は、やや硬めに炊かれフワトロの蒲焼との相性もよい。初めは大事に少しずつ、蒲焼とご飯のバランスを慎重に考えながらいただいているのだが、もうダメだ箸が止まらない。

「山椒をかける場合は、鰻の風味を消さないように、ご飯と鰻の間にかけるとよいですよ」と女将さんが教えてくれるが、匠のうなぎに集中している間は、もう何も聞こえなくなってしまう。実は、次回は、「ひつまぶし岩塩焼」を食べようと密かに思っている。
「特選うぐいす」焦げ目がなく綺麗な黄金の飴色をしている

「特選うぐいす」焦げ目がなく綺麗な黄金の飴色をしている


■入谷鬼子母神門前のだや
住所:東京都台東区下谷2-3-1
Tel:03-3872-0517(予約受付)
営業時間:
11:30~15:00(L.O.14:00)
17:30~21:00(お食事L.O.20:00/ドリンクL.O.20:30)
定休日:月曜日(祝祭日の場合営業、翌日休み)
ホームページ:http://www.at-ml.jp/?in=67764/
地図:Yahoo!地図情報

※データは記事公開時点での内容です


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