やる気アップは間接的にやった方がうまくいく
以上、のび太のやる気のなさの原因を探ってきましたが、これを「やる気アップのヒント」としてどう活かしていくべきでしょうか? のび太ののんびり気質を叩きなおし、ドラえもんに未来に帰ってもらい、ママが叱るのをやめれば、のび太は変身するのでしょうか?一般的には、原因を解消すれば、問題が解決するものが多いのですが、育児に関しては、原因解消が必ずしも改善に結びつかないことがよくあります。
「のび太の生まれ持った気質」は変えられない
たとえば、1つめの「のび太の生まれ持った気質によるもの」。この”生まれつきの性分”は変えることができません。のび太のママが、家が揺れるほどの大声で叱っても、のび太ののんびり気質は変わらないのです。親が子供のことで悩んでいるとき、変えられないものを変えようとして、いつまでも変わらない我が子にイライラしていることがよくあります。この”気質”や”性格”というのはとかくターゲットになりがちです。しかし、親が向き合うべきなのは、変えられるものだけ。よって、この”気質部分”は、やる気対策の対象としては不適切。持って生まれた気質はそのまま受け止め、その上で対策を考える必要があります。
「親の助け舟」はホドホドに
次に、2つ目のドラえもんの存在についてですが、のび太とドラえもんは大親友。もし未来に帰ってしまったら、のび太は立ち直れず、やる気はさらに低下してしまう可能性が。秘密道具はいつも万能というわけではないですし、のび太もそれなりに学んでいるので、やはり二人は一緒にいるのが一番です。しかし、現実の社会では、子供が苦労しないようにと親がすぐに助け舟を出してしまうのはNG。この記事『6歳までの親業って?自主性とやる気の子育て心理学』でご紹介しましたが、心理学的に見ても、成長のためには、悲しみや不安、怒りを感じることも非常に大切です。
親ができるのは、叱り方を改善すること
今回の要因の中で、親がダイレクトに働きかけることができ、しかも効果が得られやすいのは、3つめの要因である「叱り方」を改善することでしょう。子供が奮起してくれないとき、のび太のママのように、ついその場でなんとかしようと考えてしまうことがあります。それゆえ、強い力がかかることに……。しかし、のび太ママの失言が示しているように、「根気がない」という悩みに、強い力は逆効果。強い叱責や厳しい接し方は、子供のやる気を逆にどんどん低下させていってしまいます。
やる気の問題は、外堀から埋めていくのがおすすめです。その外堀とは、子供しっかりと温めてあげること。イメージ的には、巣で卵を温めるお母さん鳥です。やる気や根気がなかったりすると、その子は家の外でも色々と大変な思いをしていることがよくあります。先生に叱られたり、友達にからかわれたり……。そんなとき、家の中だけでも温かかったら、子供にとってそれ以上の安堵はありません。
だれにとっても、家はココロを温める場所。子供ならなおさらです。難しく考えず、学校に行く前にギュッと抱きしめてあげたり、外から帰ってきたらおやつを一緒に食べたり、ということからはじめてみましょう。一見すると、子供のやる気対策としては遠回りに思えるかもしれません。でも、子供の気持ちをほんわかと温めることで、自分の存在をポジティブに受け入れ、物事にも前向きに働きかけるようになってきてくれます。