歯・口の病気

子どもの口臭がひどいときの原因・対処法・治療法

【歯科医が解説】「子どもの口が臭い」「口臭がひどい」と相談を受けることは珍しくありません。大人の口臭は歯周病が原因のことが多いですが、子どもの場合は口呼吸が原因のことが多く、他にも風邪を始めとする病気やストレス、歯並びや歯周病など、様々。原因をしっかりと理解して、ガムを噛んだり、病気治療を進めたりと適切に対処することが大切です。

彦坂 実な美

執筆者:彦坂 実な美

歯科医 / 歯の健康ガイド

子どもの口臭の原因……歯磨き不足だけではない?

子供と母親

恥ずかしがらずに、正しい原因を見つけて改善していきましょう


歯科で診療していると「子どもの口が臭くて心配なのですが……」と相談に来られる方がいます。受診の際に、恥ずかしそうにされる方や、むし歯でもないのにと申し訳なさそうに相談される親御さんも少なくないのですが、口臭もれっきとした病気ですので、正しい原因を見つけて改善することが大切です。

子どもの口臭が気になる場合、「口臭がひどいとお友達に何か言われてしまうのでは……」といった不安をもたれることもあるようで、ついむきになって、「歯を磨きなさい!」と歯磨きに神経質になってしまうこともあるようです。

しかし、子どもの口臭は、歯磨きの仕方以外にも原因があるのです。

大人の口臭の場合、主な原因は歯周病です。それに対し、子どもの口臭の原因は様々です。思春期の子どもはデリケートですから、大人は動揺せずに、口臭は病気の一つであり、原因と解決方法があることをしっかり理解して、適切に対処させることが第一です。知らないことには不安を覚えがちですが、前向きに対処していくようにしましょう。
 

子どもの口臭の原因で一番多い「口呼吸」の直し方

人は無意識の状態や寝ているときは鼻で呼吸をしているものですが、いつも口で呼吸する習慣がついてしまうと「口呼吸」の状態になります。すると口の中がいつも乾いた状態になるため、菌が繁殖しやすくなり、これが口臭を引き起こします。子どもの口臭の原因で一番多いのが口呼吸です。

口の中は常に唾液が循環していることで潤され 、清潔に保たれていますが、口呼吸になってしまうと乾燥し状態は悪化します。

子どもが寝ているときに口元に耳を当て、口と鼻どちらで呼吸しているか確認したり、日中いつも口がぽかんと開いている状態ではないかを確認してみましょう。

口周りの筋肉が弱かったり、単に口で呼吸する習慣がついているだけの場合は、ガムを噛んで鍛える、睡眠時に口に貼るシールを使用するなどの解決策があります。ただ、他の原因の場合もありますので、まずは専門医を受診してからです。
 

口呼吸の原因となる病気・症状

以下で口呼吸の原因になりやすい病気や症状を挙げます。

■鼻づまり・鼻炎・アレルギー
アレルギー性鼻炎や喘息など、呼吸器に関わる病気を持つ子どもも近年増えてきています。また、アデノイドという部分が肥大している状態や蓄膿により鼻呼吸がうまくいかない状態に陥り、口呼吸になる場合もあります。

睡眠時無呼吸症候群やいびきがある子も、口呼吸している場合があります。鼻づまり系は耳鼻咽喉科と歯科との連携の分野ですので、歯科医院と耳鼻科と両方に通院する必要があります。

どちらかの医院に行けば必ず「紹介状」を書いてもらうことができます。受診することで症状や病状、必要な治療を教えてもらうことが可能です。

■歯並びの悪さ
上顎前突、要するに出っ歯の状態にあると、必然的に口が閉じにくい状態になり口呼吸が発生することがあります。歯並びが原因で発生する、口ぽかん状態や口呼吸による口臭もありますので早いうちに専門医を受診することが大切です。

というのも、あごの発育は0歳から12歳ごろまで続きます。あごの発育中の骨の柔軟な時期であれば、歯科矯正が成功しやすい可能性もあります。

■風邪や消化器系の病気
風邪をひいたりして胃腸が弱ると、口臭が発生することがあります。また、薬を飲むと胃腸に負担がかかり、内臓からの口臭が発生することがあります。消化器系の病気が原因の場合もあるので、注意が必要です。

■むし歯・歯肉炎、ストレス
むし歯や歯周炎で口の中の状態が悪化すると、口臭が発生することがあります。磨き残しが蓄積されるとむし歯や歯肉炎になる可能性があります。子どもひとりでの歯磨きでは不十分な場合が多いです。小学生になると仕上げ磨きを嫌がる子も出てきて、つい子ども任せになりがち。やはりそれでは不十分で、仕上げ磨きは10歳頃まで必要だと言えます。

また、過度のストレスにより、唾液の分泌が低下することが報告されています。昨今、現代社会はストレスであふれています。子ども本人にも、お受験や友人関係、また環境の変化など様々なストレス要因がありますし、親のストレスも子どもには伝わるものです。

■糖尿病
糖尿病によって生成される物質により口臭が発生することがあります。子どもでも、糖尿病になることがあります。主に自己免疫機序が作用して、進行性に膵臓のβ細胞が破壊されインスリン分泌の低下をきたす1型糖尿病と、肥満や食生活の乱れにより後天的になる2型糖尿病があります。

共働き家庭の増加や外食産業の充実により、昔ながらの食生活から欧米化した食生活になりつつあります。子どもの運動や食生活の見直しも大事です。

※1型糖尿病は自己免疫機序が関与するため、運動や食生活だけでは改善しません。専門医の受診が必要です。
 

心配しなくてよい生理的口臭のことも……上手な口臭予防法

また、これらの病気などに該当せず、ただの生理的口臭のこともあります。誰にでもある、その人その人の口臭で、体臭のようなものです。ニンニクを食べたり、キムチを食べたりした後に口が臭うといった、ごくごく普通の生理反応ですので、一時的な場合は気にしすぎなくてよいでしょう。

口腔には元から口臭を防いだりする自浄作用が存在し、その役割を果たすのが唾液です。唾液分泌が低下していなければ、食物による口臭も多少なりとも緩和されます。外出先でご飯を食べた後、歯磨きできない状況でも唾液分泌が盛んであれば、口臭予防として効果的です。

その方法として日頃からガムを噛んで顎や頬の筋肉を鍛えたり、奥歯のあたりを頬から押すマッサージをすることなどで唾液線が刺激されて分泌量が増えます。

何気なく子どもと遊んでいるときやテレビを見ている時などでも、口臭予防として簡単な方法ですので実践してみてください。
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