オペラ/おすすめのオペラ作品解説

愛と嫉妬と死のオペラ、『オテロ』(2ページ目)

『アイーダ』で引退しようとしていたヴェルディに再びペンを執らせたシェークスピア作品、『オテロ』。複雑な心理と矛盾を抱えたオテロや他の登場人物を巡って展開する物語は世界中のオペラファンを惹きつけてやみません。

メサマデロ  アントニオ

執筆者:メサマデロ アントニオ

オペラガイド

ドミンゴ以前の『オテロ』

ドミンゴ以前には、マリオ・デル・モナコがオテロの声がオテロの理想でしたが、彼のオテロは、ヒステリックで暴力的でした。

メトロポリタン歌劇場管弦楽団によるこのバージョンで、オテロの敵役であるイアーゴーとの掛け合いの場面には、鳥肌が立ちます。ヴェルディを歌わせたら右に出るものはいないと言われるレナード・ウォーレン は、イアーゴーのははまり役です。デスデモーナ役のビクトリア・デ・ロス・アンヘレスは、歴代のデスデモーナの中でも最高。録音自体も1958年にしては悪くありません。

ジョン・バルビローリ の指揮とディートリヒ・フィッシャー=ディースカウ のイアーゴー、フィルハーモニア管弦楽団 のバージョンは、この3者のコンビネーションが素晴らしいのですが、残念なことに、肝心のオテロとデスデモーナ役があまり上手ではありません。オテロ役のジェームズ・マックラッケンは、イタリア語も下手で、ヒステリックな声で台無しになってしまっています。

デジタルレコーディングが好きな人には、チョン・ミュンフンの指揮で、ドミンゴのオテロのバージョンをお勧めします。ここでは、ドミンゴの声はバリトンに近くなっていますが、相変わらずの名声です。現代版としては、一番のお勧めです。


最後に、ガイド一番のお気に入りをご紹介します。トスカニーニ指揮、1947年のモノラル録音です。

指揮者と歌手達の力量が音の粗さなど全く気にさせません。トスカニーニの指揮は力強く、作品の最初から最後まで聴衆をしっかりと導いていきます。ラモン・ヴィナイは、オテロ役で今でも語り継がれている歌手です。ヴィナイは、暴力的で、嫉妬深く、絶望的なオテロの性格を完璧に表現しています。

ジュゼッペ・ヴァルデンゴもイアーゴー役で名を馳せており、明確な発音で、優雅にイアーゴーを歌いあげています。世界中の評論家に愛されているバージョンです。

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