静岡県の不妊治療の状況や特徴を教えていただけますか?
最近は全国平均だと思いますが、私が開業する前は、この地域には不妊治療ができる環境がほとんどありませんでした。前職は愛知県で多くの不妊施設があり、みなさん抵抗なく不妊治療をしていましたが、静岡で開業してからは、不妊治療に対する差別的な周囲の目とそれと同じように患者さんの不妊治療に対する後ろめたさをすごく強く感じました。
待合室の様子です。
不妊治療を認めてもらえることに対して努力をしました。啓発するということが必要でラジオ出演や公開講座を行いました。
また、学会活動により、医療関係者とのコミュニケーションも大事にしてきました。少しずつ不妊治療も必要だということを認識してもらえる様になって来たと思います。
お話を聞いていると静岡県は不妊治療を始めることが大変だったようですが、フロントランナーとして今まで俵先生がやってきたことが徐々に浸透してきているような気がします。どのようにお感じですか?
そうだといいですね。以前はARTをうける人はあまりいなくて、治療するとしたら東京などへ通院する必要がありました。一般治療歴がとても長くうけられている方も沢山いました。一般治療を5~10年されている方が多かったですね。培養室(ラボ)の様子です。
不妊専門クリニックは患者さんがコソコソ通うところではないと思うので、イメージ的にも行ってみたいと思えるところを作りたいと思っていました。また華美ではなく女性が入りやすいような環境を作れたらと思っていました。
今後、静岡県の生殖医療に対してどのようなビジョンをお持ちでしょうか?
私たちが中心となって情報発信ができるようなレベルにいたいと思っています。治療面では、偏った治療ではなくて、ガイドラインに添いつつも様々な治療が提供できる方針で治療を進めて行きたいと思います。また医師に関しても専門医を取りたい方が来る指定施設なので、教育といった面でも力を入れたいと思います。体外受精後の安静のための部屋です。
患者さんにとっても、医療関係者にとっても幅の広い治療を提供できる施設を目指す事は大切なことと思います。
男性不妊とか、今後でてくる着床前診断とか、遺伝カウンセリングとかも今後作ろうとは思っています。そういったひきだしを多く持った治療提供をしていきたいと思います。
先生の治療を受けていると、生活改善や東洋医学があることがユニークだなと思うのですが、それも目的があってのことでしょうか?
そうですね。妊娠が培養士の技術や医師の技量だけで成立するのではないと思うので、患者さん本人やご主人の妊孕性も合わせて向上させたいと思っているので、我々はベストな治療を提供する必要はありますが、ご本人とご主人にもそういう努力をしてもらってお互いの結果、妊娠につながるという考えのもとで診療しています。鍼灸治療に関しては、以前愛知県で勤めていた時に鍼灸院の先生と共同研究や治療をおこなったご縁です。鍼灸に関してもデータと蓄積し、、エビデンスを大切にした治療を目指してやっていましたので、それを継続して行っているということです。
患者さんの年齢層は高いでしょうか?
そうですね。年々高くなっている印象です。自治体やメディアも、年齢のことを発信するようになって、「年齢が高いということが妊娠しにくい原因の一つ」とみなさん気づきはじめた頃だと思います。はじめて受診します、という方で、初診時で45歳をすぎている方もめずらしくありません。
クリニック横の小道です。可愛らしくホッとする感じです。
地方ならではの事があります。なので全てが身近なことです。妊娠した方も治療中の方も、多くが地域の方です。狭いコミュニティーの中で治療をおこなうので、親近感・責任感をもって患者さんと接することができます。
最後に俵先生から読者へのメッセージがございましたら、宜しくお願い致します
ご夫婦の意識や妊娠したいために自分達で努力できるところは頑張っていただきたいです。例えば当院は煙草を吸っている方は治療しませんし、体重が多い方は食事指導を合わせて実施致します。妊娠の妨げになるものをどれだけ排除できるか。治療を受ける気軽さも大事ですが、それなりの覚悟も大事です。治療にきたら何かをしてもらえるという、お任せ的な気持ちではなく、ご夫婦の同じ方向に向いた気持ちで治療してもらうことが結果にも繋がるのではないかと思います。
クリニックの外観(夜)です。
どんなに治療をしても100%の結果をだせない世界なので、信頼関係も大事だと思います。
病院を転々として何をしたらいいかわからなくなってしまう方もいるかもしれません。我々は多くの経験から判断をし、その方には何が必要なのかという情報を提供するのが仕事だと思っています。
まとめ
俵先生を一見すると穏やかな美人女性医師という感じですが、お話していると静岡の不妊治療を開拓してきたという自負と責任感が言葉の端々に感じられ、その重みや経験値の高さがこちらにも伝わってきました。とにかく自分の出来る最高の治療はするから、患者さん側も一緒になって努力していい結果を目指そうねというスタンスは患者さんにも凛とした気持ちへの切り替えと妊娠に向けての後押しになると感じました。
インタビューの後、院内を俵先生、藤田培養部長に院内やラボを見学させて頂きました。隅々までこだわりのある院内を拝見して、妊娠する人が一層増えるのだろうなあと思いました。
診療後の多忙でお疲れの時にもかかわらず、取材に応じて頂き、誠にありがとうございました。この場をお借りして厚く御礼を申し上げます。
■俵IVFクリニック
http://www.tawara-ivf.jp/