昨今の引き出物事情!選ぶ前に知っておきたいあれこれ
ロマンティックなプロポーズから「幸せな結末」へ一直線――と都合よくいかないのが結婚までの道のり。とりわけ人生の一大イベントである結婚式には紆余曲折がつきものです。会場選びに衣装のグレード、列席者名簿に両家のメンツ、と地雷は至るところに。なかでも、「引き出物」は最も頭を悩ませる項目のひとつではないでしょうか。今回は、4人の専門家をお招きし、現在の引き出物事情とおすすめの引き出物について大いに語っていただきました。
All Aboutからは元ゼクシィ編集長で「結婚ガイド」の森川さゆりさん、TVや雑誌にも出演多数する「お祝い・ギフトガイド」冨田いずみさんのお二人。さらに、ウェディングプランナーとして幅広く活躍するWedding Labの代表・遠藤佳奈子さん、オリジナルのブライダルギフトカタログ・サービスを展開する株式会社タイムレスの三瓶明彦社長、と豪華な顔ぶれが揃います(以下、敬称略)。
この座談会から、波風たてずに結婚式を迎えるためのちょっとしたヒントが見つかるかも!
引き出物の「贈り分け」は偉大なる発明である
――今も昔も「引き出物」を選ぶのにはなかなか時間がかかるようです。せっかくお贈りするものだからこそ、選ぶほうも慎重になるのだと思いますが、トレンドはあるのでしょうか。森川 昔は表立ってはなかったのですが、今は「贈り分け」が多くなっていますね。最近の傾向として、結婚式の列席者やお世話になった方々への「おもてなし」をより強く意識するようになったことが背景かと思います。「喜ばれるものは何か」と考えることを大切にしたいという想いの表れではないでしょうか。
冨田 確かに、ギフトカタログでも贈り分けが主流になっていますよね。もう一般的に「浸透した」と言っていいと思います。今は男女別、年齢別、既婚者向け、未婚の方向けなどいくつものタイプがあります。もうプライベートギフトかというぐらい(笑)。ワンアイテムのなかでも贈り分けができるようパターンを揃えているものもあります。最近、「なるほど」と感心したのが江戸切子。使っている技術の違いや色の違いで、差別化をしています。
遠藤 現場でも、この10年くらいでしょうか、贈り分けの浸透を実感することが増えてきました。引き出物を30パターンに贈り分けたカップルもいて、手配を間違えるのが怖かったですね。ミスをしないように本当に注意が必要でした。個人的には4つか5つまでが妥当だと感じています。 編集部 なるほど、皆さんのお話をうかがって、「贈り分け」って本当に便利だということがわかりました。もはや「発明」と言ってもいいかもしれませんが、いつごろから始まったのでしょうか。
三瓶 正式な時期まではわからないですが、かつての上司の話で思い出すことがあります。いまから20年前ぐらいの地方都市でのエピソードなんですが、そのときは新郎新婦はなにも決めなかったそうなんです。プランナーにほとんどお任せ。例えば、会場で流れる音楽も、その日に式を挙げた5組ともすべてホイットニー・ヒューストンとか(笑)。総合式場での挙式がポピュラーだった時代はどこもそんな感じだったようです。それからしばらくしてゲストハウスでの挙式文化がアメリカから入ってきた。このタイミングで引き出物も入場曲も、新郎新婦が自分で決めるというように変わったのではないでしょうか。
森川 ゼクシィの創刊時のことを思い出してみても、やはりそのような感じで、式に新郎新婦の主導権がなく、ワンパターンのものが多かったように思います。その意味で、ゼクシィは既成概念を壊すような提案をしていたので、業界からよく怒られました(笑)。贈り分けについても、20年前から10年前の間のどこかでだれかが発明したものだと思います。「自分で選べる」という、当たり前なんだけれどいい時代になりました。
引き出物選び、親からの干渉とどう折り合いをつける?
――地方を問わず、やっぱり気になるのが引き出物の風習。その土地に根ざしたしきたりや、家族の考え方によって選ぶものも変わってきます。大切な人にお渡しする贈り物だけに、「当然、親の意見も聞かないと」となりがちですが、最近の傾向は? 冨田 引き出物は大きく3つのパターンに分かれるような気がしています。ひとつは自分たちの価値観やセンスを大切にして選定する「こだわり派」。それから、「サプライズ派」。こちらは悪趣味でも構わず(笑)、驚きの品を贈り物に選ぶ場合です。もうひとつが「伝統派」。親の意見や昔の慣習にならうといったケースは少なくありません。森川 「結婚式場」、「新婦の衣装」それから「引き出物」については親の意見が多いといわれています。新郎の衣装や食事の内容に比べ、どうしても気になってしまうのかもしれないですね。また、傾向を見ても、地方に行くほど親の関与度が高いと言えそうです。かまぼこを入れなきゃいけないとか、かつおぶしを入れなきゃいけないとか、いろいろな伝統がありますしね。
三瓶 私は愛知出身ですが、例えば名披露目(なびろめ)という文化があります。東海地方独特の引き出物で、新郎新婦の名前を書いた熨斗を付けて皆様にお渡しします。ほかにも「引き出物は5品入れないとダメ」だとか、細かくあります。
遠藤 私は都内での仕事が多いのですが、かつおぶしを佃煮とかクッキーとかに差し替えてご用意される方も少なくありません。また、スタート段階の会場選びや招待状の文面などでご自身も意見される親御さんは、引き出物でも意見のある方が多いです。これは新郎新婦がいう「うるさい親」ではなく、昔ながらのしきたりや、家族のならわしを大事にされているだけなんです。東京でもつねに「今」のやり方と「伝統」のやり方とがせめぎあっていますよ(笑)。
自分たちのセンスを大事にする傾向も増えてきているようですが、できれば家族とも相談してベストな引き出物を選びたいものです。専門家たちの経験を聞いていると、やっぱり親御さんとはしっかり話しておいたほうがいいかも!?
さて、そんななか、やっぱり便利なのがここ10年ほどで急激な進化を遂げたアレです。
引き出物選びに「カタログ」は強い味方!
森川 近年、ギフトカタログかなり浸透してきている印象です。いまではカタログがかぶらないように、皆さんかなり気にされているようですよ。三瓶 ギフトカタログについては各社、本当に努力して商品を揃えているな、と感じます。例えば有名ショップの商品を独占して扱っているとか。「BEAMSの商品が入っているのはこのカタログだけ」というレア感をうまく演出していたりします。バーニーズ・ニューヨークなんかですと、一冊まるごとそのブランドの商品、といったケースも。
冨田 消費者も「コラボ」に慣れはじめました。単に市販されているものではなく、オリジナルのものに価値を見出すようになってきたように思います。
三瓶 例えば食品だけにしぼったカタログや、日本製のものだけを扱ったカタログなど切り口はたくさんあります。ただ、いくらこだわって差別化をはかっても、購入に至らなければ意味がありません。「写真を見て満足」とならないよう、カタログを作る側も勉強していかないといけませんね。
次ページでは「カタログ派じゃないあなたにおすすめ!専門家の選んだ引き出物」をご紹介します。