富岡名物・ぶどう焼き
レトロタウンの散策も終盤に入り、途中で小腹がすいてきたら、松伊堂の「ぶどう焼き」がおすすめです。お店の脇にある「ぶどう焼き」と書かれた看板も、とても年季が入っています。お店に入ると、これまた昔なつかしいガラスケースの中に “草もち” など、伝統的な和菓子が並んでいました。
これが富岡市民に長年愛されてきたソウルフード「ぶどう焼き」です。 “ぶどう” と言っても、ぶどうが入っている訳ではなく、ぶどうの房の形をした皮の中に、程よい甘さのあんこが入った焼き菓子です。もちもちした皮は香ばしく、小麦粉、あずき、砂糖と、シンプルな素材が素朴な味を引き出しています。この「ぶどう焼き」は松伊堂のご夫婦がひとつひとつ手作りしているため数に限りがあり、夕方までには売り切れてしまうこともあるそうです。
■DATA
松伊堂
住所 : 〒370-2316 群馬県富岡市富岡1092 (富岡製糸場北側、西銀座通り近く)
定休日 : 毎週水曜日
問い合せ先 : 0274-62-2888
まさに裸の付き合い!富岡の古き良き銭湯・大正湯
「ぶどう焼き」の松伊堂から歩いて3~4分のところにあるのが、ノスタルジックを絵に描いたような「大正湯」です。ここは富岡で唯一残っている現役の銭湯として、地元の人たちから愛されるレトロスポットとなっています。一見アパートのような造りのため、最初はここが銭湯だと気づく人は少ないようです。
ここは昭和2年から富岡で営業している老舗の銭湯で、今年創業88年目を迎えます。では、なぜ「大正湯」なのかと思い、銭湯のおかみさんから話をきいたところ、4代前の創業者が下仁田町で最初に銭湯を始めたのが大正時代ということで、そこから由来するのではないかということでした。「通ってくる人がいるうちは続けてくれ」という先代の遺言を守り、現在は4代目ファミリーが消えかかる銭湯文化の灯を守ってくれています。
どうですか、このレトロな感じ!いまどきのスーパー銭湯と違い、シャワーやジェットバスなんてありません。湯船と洗い場、そして銭湯定番の黄色いケロリンの桶と、必要最低限の設備しかないところが王道を感じさせます。昔ながらの木製の番台で400円を支払い、板張りの小さな脱衣場からガラス戸を抜けてお風呂まで10歩も歩かないないほどのコンパクトな造りです。よく見ると、脱衣場には風呂道具がいくつも入ったカゴがあります。これは常連さんの荷物だそうで、ボトルキープではありませんが、タオル一枚だけでいつでも身軽に来られるという訳です。
そして、洗い場にある円柱形のカランに目が釘付けになりました! まさに有るようでなかった斬新なデザイン!製糸場が稼働していた頃は、仕事終わりの工女さんたちで順番待ちの列ができるほどの盛況ぶりだったそうですが、きっと工女さんたちも、この蛇口をぐるっと囲みながらの世間話に花を咲かせたことでしょう。
■DATA
大正湯
住所 : 〒370-2343 群馬県富岡市七日市1143
営業時間 : 15時~20時 (大雨の日などは臨時休業するときもあり)
定休日 : 毎週木曜日、日曜日
入浴料 : 大人 (中学生以上) 400円、小学生180円、幼児80円
問い合せ先 : 0274‐63‐6390
富岡のノスタルジック建物探訪
長い間、手つかずのままの街並みが残されてきた富岡には、製糸場のように歴史的にも価値のある民家が数多く現存します。なかでも、創業明治45年の江原時計店は製糸場前の城町通りにある時計屋さんですが、昔は消防詰所としても使われていたそうです。屋上に突き出たモダンな形の部分が火の見やぐらだった珍しい造りとなっています。
富岡製糸場周辺の路地には、“庶民の近代史” とも言える様々な路地裏文化が残っていました。明治のころから残る建物や、昭和の名残を留める飲み屋街、創業当時から変わらぬ味など、町全体が歴史ミュージアムのようです。富岡製糸場だけ見て帰るのはもったいない!そんな魅力的な町へは明治30年から走る上信電鉄に乗って出かけ、ゆったりとした旅を楽しんでみてくだい。