特急「いなほ」のグリーン車はおススメ
特急「いなほ」は、必ずしも観光用の列車ではない。したがって、景勝ルートを走っていても、車窓には興味を持たない乗客も少なからずいて、海側の窓側に座っても、ブラインドを降ろしてしまう人もいる。通路側の座席であったり、山側の席に当たってしまうと、景色が見えないこともある。そんな人の要望に応えてか、2013年秋に登場した車両E653系のグリーン車には、展望コーナーにもなるラウンジスペースが設けられた。
グリーン車には、わずか18席しかなく、通路をはさんで2人掛け席(海側)と1人掛け席(山側)が並ぶ。しかも座席の後ろには間仕切りがあり、個室の雰囲気を醸し出すのみならず、大きくリクライニングしても後ろに座っている人に気兼ねする心配もない。これは、わざわざグリーン料金を払っても乗る価値のある豪華座席だ。
新潟から酒田、秋田方面への「いなほ」は、先頭の1号車がグリーン車である。先日乗ったのは、夏休みまで間がある時期のためか、あるいはシニア向け格安切符である「大人の休日倶楽部パス」利用期間で普通車はかなり混んでいても、グリーン車はパス対象外だからか、空いていた。おかげで、海側の2人席に座っても、隣は空席のままで、ゆったり過ごすことができた。
特急「いなほ」グリーン車のラウンジスペース
リクライニングの利いたシートでも充分車窓は堪能できたのだが、ものは試しとばかり、ラウンジスペースに行ってみた。乗車中に気楽に車内を移動できるのは、飛行機やバスでは味わえない鉄道旅行のメリットであろう。
グリーン席後方にあるラウンジスペースは、海側は海を向いた席が、山側は向い合せのテーブル席がある。ともに簡素な席で、リゾートしらかみ等の展望スペースをちょっとだけグレードアップした感じだ。ソファー席などあまり豪華にすると、長時間独占する人が出てくるかもしれない、と考えてのことかもしれない。明らかにグリーン席の方が立派だから、ちょっと気分転換に使うくらいが適当だと思う。それにしても、観光列車ではない普通の特急でこの余裕、遊び心のある車両は、ヒット作である。