「みんなができることができない自分」

そのまま30歳を越え、20代の延長のように勢いだけで突っ走ってきた。それなりに充実していたが、ふと気づくと35歳を越えていた。
「周りを見渡すと、ほとんど結婚している。同期でわりと親しくしている男女20人くらいいるんですが、結婚していないのは私ともうひとりの女性だけ。あとはふたりくらい離婚組もいる。離婚組はいいですよ、余裕があって……」

ここから話が深くなっていく。アラフォー女性の中には、実際には結婚したい気持ちがないのに、「周囲に対して無難」という理由だけで、「結婚したい」と言う女性も少なくない。
「みんなと同じように生きたいわけじゃないんです。ただ、みんなができることが、どうして自分はできないんだろうと思うようになって……。結婚できないのは、自分では気づかない重大な欠陥があるのではないか、と。人間的にね」

おそらく、ケイコさんは、子どもの頃から「人よりできる子」だったのだろう。だから、自分の努力だけではどうにもならない「結婚」というものに対して、どう対処したらいいのかわからないのかもしれない。ケイコさんの焦燥感は、どうやら口先だけではないらしい。
「一度はしなくては、という気持ちが強いです。人と同じことができなければ、この先、どういう顔をして生きていけばいいのか……。たとえ数年で離婚したとしても、私は結婚したことがある、という事実があれば生きていける」

彼女の言い方には、負け犬になりたくない、という勝ち気さとは少しだけ違う感情を感じる。自分の生き方に自信があるようで、実はない。自分を受け入れきれない足元の揺らぎのようなものを感じてならなかった。つまり、「人と同じことができない自分」を、認めることにも受け入れることにも、戸惑いを覚えてしまうのかもしれない。

しかし、「人生、これでいい、これで万全」と思えるような生き方など、人はほとんどできないのではないか? 多くの人がいろいろな重荷を背負いつつ、よたよたと歩いているのではないか? 
人はどう生きたって、選ばなかった道を思って後悔するものだと思う。恋愛も結婚も離婚も、そんな選択肢のなかのひとつなのではないだろう。

「40歳」が実感できる年齢になって初めて、その壁の高さ厚さに戸惑っている30代後半女性は多いだろう。振り返ってみれば、仕事も恋愛も、たいしたことをしてこなかったのではないかと足元が揺らぐ気持ちになるのもよくわかる。

だが、壁を目の前にしてみれば、意外にも高くないかもしれない。ぶち破ることだってできるかもしれない。さらに言えば、壁など乗り越えなくても回り道すればいいかもしれない。
「壁」はおそらく幻想に近い代物だと思う。「世間体を気にする自分」「他人から見た自分のイメージを気にする私」が壁を作り出しているのだ。
「私は私、やりたいように生きていく」と思えたら、きっと壁は自然消滅している。そこまで潔くなるのは、なかなか大変なことだけれど……。

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