「一度は結婚しなければ」の心理
憧れの結婚、じゃない。多くの人ができることができない自分に苛立つという心理。
最近、出会ったケイコさん(36歳=仮名)は、昨年、35歳になりアラフォーの足音が聞こえたとたん、急に焦燥感に駆られはじめたという。
「四捨五入すると40歳。うちの母が40歳のとき、私はすでに15歳だったことを思うと、自分はいったい何をしてきたんだろうと思ってしまって……」
彼女は、金融関係の会社に勤める会社員。給料もボーナスも安定している。実家近くのマンションでひとり住まい。両親は健在で、ほとんど干渉はされない。
「平日は仕事で遅くなったり、同僚と飲みに行ったり。週末は学生時代からやっているテニスで汗を流して。いつどこで何をしようが自由。そんな状況が10年以上続いているから、この居心地いい環境を壊す気になれなかったんです」
ところが四捨五入して40歳、という事実に愕然とした。
女の人生には、30歳、40歳、50歳と大きな壁がそびえ立つ。30歳前に結婚したいと願う人も少なくないが、今の時代、比較的あっさり30歳の壁は越えられるだろう。問題は40歳だ。結婚よりむしろ、出産の壁と言ってもいいかもしれない。
「子どもを産むなら30代のうちに、と思います。ところが、子どもが本当にほしいかどうか、突き詰めて考えたことがなかった。それ以前に、本当に自分が結婚したいのかどうかもわからない。好きな人ができてつきあったら、自然と結婚へと流れていくものだと頭のどこかで思い込んでいたんでしょうね」
学生時代から、恋愛は何度もしている。20代後半で、自然と結婚することになるんだろうと思っていた人に、いつの間にか距離を置かれていた。
「ちょうどものすごく仕事が忙しい時期で、正直言って彼のことは二の次だった。でも、それは理解してくれていると思っていたんです。だから距離を置かれたことさえ気づかなかった」
仕事が一段落して彼に連絡してみたら、妙に冷たい受け答え。そういえば、仕事が忙しいとわかっていながら、彼からは「大丈夫?」「がんばってる?」と気を遣ってくれるようなメールひとつ来なかった。
「それは私のほうがしなければいけないものだったみたいですね(笑)。寂しい思いをさせてごめんねって……。でも本当に、その頃はそんな余裕がなかったんですよ」
わかってくれない男と無理につきあうこともないか。ケイコさんはそう思って、彼から離れた。あれほど好きだったのに、自分自身もいつしか気持ちが冷めていた。それがひどく切なかったという。