男子サッカー日本代表は監督交代のたびに揺らぐ
2010年の南アフリカW杯後、日本代表の監督に就任したのはアルベルト・ザッケローニだった。ザックの愛称で呼ばれた彼は、母国イタリアのクラブチームで数多くの実績を残してきた指導者である。昨夏のブラジルW杯を最後にザックが退任すると、日本サッカー協会はハビエル・アギーレを監督に指名した。今度はメキシコ人である。
アギーレに八百長疑惑が浮上すると、またしても外国人に指揮権が委ねられた。ボスニア・ヘルツェゴビナ出身のヴァイッド・ハリルホジッチである。
外国人監督が悪いとは言わない。ただ、彼ら3人のサッカー哲学に、どれほどの共通点があるのか。監督が代わるたびに、サッカーの方向性が揺らいでいるのが現実だ。
代表監督の交代とともに、コーチングスタッフもほぼ入れ替わる。ブラジルW杯の失敗を当事者として知るスタッフが、現在のチームにはいないのだ。
鹿島アントラーズという成功例
J1リーグに鹿島アントラーズというチームがある。国内3大タイトルと評されるJ1リーグ戦、ナビスコカップ、天皇杯を、Jリーグのクラブでもっとも多く獲得している名門だ。鹿島の強さには様々な理由があるが、強化の一貫性は見逃せない。
1993年のJリーグ開幕から、もっと言えば前年のプレシーズンから、鹿島に関わる外国人監督と選手はブラジル人で統一されている。アジア枠の導入で韓国人選手も獲得しているが、ブラジル以外の南米やヨーロッパ出身の監督や選手は、これまでひとりもいない。
日本人とブラジル人の特徴を融合したチーム作りを進め、ブラジル人が生まれながらに持つ勝者のメンタリティをユニフォームに染み込ませてきた鹿島は、監督が代わっても、選手が入れ替わってもチームのスタイルにブレがない。いきなり守備的になったり、システムが変わったりすることがないのである。
なでしこにあって男子サッカー日本代表にないもの
話を男女の代表チームに戻そう。なでしこジャパンが国際大会で成果をあげてきたのは、佐々木監督のもとで継続性を担保したからである。日本サッカー協会の強化担当にも、なでしこジャパンの元監督や元選手が顔を揃える。クラブで言うところのフロントから、一体感を作り上げることができるのだ。
なでしこジャパンを世界の強豪へ押し上げた佐々木監督は、現役時代に日本代表で活躍したわけでなく、引退後にJリーグで指導者として実績を積んでいたわけでもなかった。監督としては無印と言っていい。
周囲のサポートと継続性の担保に、監督個人の情熱が折り重なれば、日本人監督でも国際舞台で成果をあげることはできる。かたくななまでに外国人にこだわる日本代表の監督人事が、ひどく虚しく感じられるのである。