歯科インプラント/歯科インプラントの施術方法・治療法

歯科インプラント手術後 歯槽骨の変化

歯科インプラントが成功するかどうかの条件のひとつに、歯槽骨の量があります。埋入したインプラントをしっかりと安定するための歯槽骨のボリュームがあるか。補う際にどのようなことに注意しなければならないのか。歯槽骨は歯肉に埋まっているため見ただけでは判断できません。適切なインプラント埋入プランを立てるためにしなければならないことは何でしょうか。

梅田 和徳

執筆者:梅田 和徳

歯科医 / 歯科インプラントガイド

抜歯即時埋入から最終補綴まで

条件さえ合えば、抜歯と同時にインプラントを埋入するケースが増えてきています。抜歯後の穴にそのままインプラント埋入する際には、どうしても穴とインプラントの間に隙間が出来てしまいます。その場合は隙間を埋めるため、そして既存の歯槽骨の吸収を抑えるためにしっかりと骨補填を行います。

手術後の段階写真

ケース1【左】抜歯即時インプラント埋入後【中央】3か月後のチェック時【右】2回目の手術時の写真

インプラントの埋入から約3か月後にはインプラントと骨の結合がうまくいっているかどうか、骨の吸収はないかなどチェックをおこないます。写真中央は埋入時から3ヶ月半が経過したところです。

骨補填をした箇所もしっかりと保たれ、既存骨の吸収もありません。チェックで問題なければ2回目の手術をおこないます。ここで骨としっかり結合されたインプラント体にアバットメントというインプラント体と上部構造(クラウン)を繋ぐ部分を取り付けます。

チェック時には「オステル」というインプラント体の安定性を測定する機器を用い、埋入したインプラント体がしっかりと口腔内で安定しているかを数値で確認することが出来ます。数値はISQ値と言われ1~100の範囲で表されます。

ISQ50以下は安定性が低く全体の治療に時間をかける必要があり、65以上は高い安定性を表しているので、早い段階でのクラウン(仮歯も含め)を装着することができます。高いISQ値が出れば2回目の手術の際にそのまま仮歯の型を取ることができ、早期に固定式の仮歯を装着し使用して貰うことも可能なのです。

固定式仮歯を装着し数か月間使用して貰うのですが、使用中には食事の際や日頃の咬合でインプラント体にストレスが掛かるようになります。そのため、仮歯の装着時よりわずかに歯槽骨が吸収したり、歯肉の形態変化が起きることがあります。その変化を想定し、骨も歯肉も少し多めに仕上げることによって理想的な最終ゴールに近づくことが出来るのです。この段階で骨や歯肉の変化が著しく、不足が大きいようであれば追加で移植することも考えなければなりません。

最終補綴物であるクラウンを装着する際にかかる骨や歯肉へのストレスは仮歯の時とできるだけ同じにしておきたいので、すべてが変化し終え理想的な形になってからクラウンを製作します。中には骨が予想以上にしっかりと出来上がり、クラウンの型取りの段階で調整することも……。既にない物を増やすのは苦労しますが、多めにある物を削ることは簡単でいつでもできます。ここまで想定してクラウンを装着するまでに入念に準備しておくのです。


埋入から数年 しっかりと長く付き合うために

2年後のレントゲンとの比較

ケース2【左】最終補綴装着後のレントゲン【右】2年後の定期検診時のレントゲン

最終補綴物の装着後は、半年ごとの定期検診で歯肉の炎症の有無や咬み合わせなどさまざまな部分をチェックします。しっかりと定期検診に来て頂くことで何か小さい口腔内のトラブルがあっても早期に発見できますし、未然に防ぐこともできるのです。

目視だけでなくレントゲン写真で歯槽骨の変化も確認し、インプラントの埋入時から骨がどのように変化してきているのかを確認することも大切です。どれだけ入念に準備してインプラント埋入をおこなったとしても、自然に骨の吸収が起こる可能性はゼロではありません。骨が吸収されるとインプラントのグラつきや周囲炎等の原因となります。ですから、定期検診時に細かく確認することが必要なのです。

こちらの写真の患者さんはとても意識が高く、定期的な健診と毎日の清掃をしっかりとおこなって頂いており、埋入時のレントゲン写真(左)よりも2年後のレントゲン写真(右)の方が歯槽骨が増えています。しっかりとしたケアとメインテナンスの賜物です。

理想的なゴールへ向けて、骨の変化を想定した手術プランニング、そして患者さん自身のメインテナンスにより長くお付き合いいただけるインプラントは完成するのです。


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