育児の悩みに、夫より親身になってくれるのはイクメンの彼だった……。
不倫もさまざまに形を変えてきた。既婚男性と独身女性が圧倒的に多かった時代から、ともに既婚のいわゆる「ダブル不倫」が主流になった。知り合う場所も、職場からSNSや同窓会などへ変化し、一時期は「ご近所不倫」もよく耳にした。同じ町内、同じマンションなどと聞くと、あまりに危機意識が低いのではないかと危惧したものである。
そして今度は、「子どもを介した関係」である。これは、今までは避けられてきた関係だ。子どもをダシにすることを、男女ともに違和感を覚えていたからだろう。子どもがからむと、親近感は増しても恋愛感情は育ちにくくもあったはずだ。だが、人々はあっけなく、その壁も越えた。恋愛にタブーはないのである。
夫より「彼」に子育ての相談
なぜ、こういった関係が増えてきたのか。ひとつには、夫婦関係の希薄さがあるのかもしれない。夫は働き盛りで、とにかく多忙。子どものことで相談したくても、女性たちも働いていることが多く、夫と顔を合わせてゆっくり話をする時間がない。夫側が、「めんどうなこと」を避けているせいもあり、「夫には何を話しても無駄」と妻側があきらめている現状もある。その点、毎日のように保育園で顔を合わせる、イクメンの「彼」なら、気軽に話ができる。
「毎朝のように顔を見るパパがいたんです。最初は挨拶程度だったけど、だんだん話をするようになって。『うちの子、最近、何でもイヤだイヤだって言うんですよ』と愚痴ったら、『うちも同じ。でもそれは成長の証だから。やりとりを楽しめばいいんですよ』とにっこり。夫だったらこんなことは言わないわ、とキュンとしちゃった」
ヒトミさん(仮名=38歳)は、そう言った。そこから彼への親近感が増した。そして3ヶ月ほど後、保育園で会うと、「僕、今日は休みなんですよ」と彼が意味ありげに言った。
「偶然なんですが、私もその日は代休だった。それで、じゃあランチでも、ということになって。何も考えずに、うちで食べませんかと誘ってしまったんです」
ゆっくり話してみると、お互い、結婚生活にはいろいろな不満があった。だがそれ以上に、好きな音楽、好きな食べ物、いろいろなことが一致していた。
「あなたのような人と結婚すればよかったわ、と思わず漏らしたら、彼が私を見た。そのとき、お互いに花火が散ったような気分になってしまったんですよね」
リビングのソファで、貪るように求め合った。
彼女にとって、子どもは宝物。彼も同じだ。お互いに、「子どもをもったことで、無条件に愛することを知ったから、深い恋愛ができる」とのこと。ん? これは夫との間で交わされるべき会話ではないのだろうか。