それならひとりでもいい
今どきの若い者は恋愛エネルギーが落ちていると、年配者は言う。確かにそうかもしれない。恋愛が唯一といってもいいくらい生きる目的だった年配者の若い時代とは違うのだから、恋愛に占めるエネルギーが少なくなってもしかたがない。それでも、「恋愛したい」「結婚したい」と思っている人が激減しているわけではないと思う。人は、本能として「つがいになりたい」ものなのではないだろうか。だが、つがいになると、そこに面倒な制度やら周りからのプレッシャーなどがいっせいに集まる。それを知っているだけに、「恋愛も結婚もめんどう、だったらひとりでもいい」となるのではないか。
保育所の増設や、子育て夫婦、ひとり親家庭へのさらなる支援(都市部の家賃補助なども含め)など、社会の制度が充実していくのはいいことだ。だが、今、現実に困っている人を助けようとすればするほど、ひょっとしたら、独身者もまた増えていくのかもしれない。結果的に少子高齢化、独身、独居老人の増加に歯止めはかからない。
めんどうなことに巻き込まれるより、日々、好きなことをして暮らしていたい。そういう人生を選ぶのも悪くない。家族がいなければ生きていけないわけでもない。「寂しい老後」と人は言うが、家族がいても孤独な老人はたくさんいる。
そうだとしたら、独身者は「消極的独身」ではなく、「積極的独身」を名乗ってもいいのかもしれない。
生涯未婚率が増えた、結婚しない人が増えたと国が発表し、独身者をくさすような論評が出るたび、個人的には「それがどうした」と思う。独身が増えたっていいではないか。楽しく生きる独身者が増えるのも悪くない。
結婚したい、子どもをたくさん育てたいと思えるような国になっていないと言う人もいる。それは真実だろう。だが、結婚して子どもを産み育てることだけが人生ではない。それはあくまでも個人の選択だ。そもそも、国に貢献するために生まれてきたわけでもないだろう。
人は自分の人生を楽しみ、充実させるために生きているのである。その個人の目的意識が、結婚や出産から離れているのが実情なのではないだろうか。