トヨタ自動車が発行する「AA型種類株式」とは
注目したい社債情報
株主は、保有する株式数に応じて同じ権利内容を持つのが原則ですが、会社法では例外として、一定の範囲と条件のもとで、権利内容が異なる複数の種類の株式を発行することを認めているのです。
今回トヨタ自動車が発行する「AA型種類株式」は、普通株式同様配当金が支払われ、議決権もあることから株主総会に出席して議決権を行使することができます。詳しく見ていくことにしましょう。
事実上の元本保証商品
トヨタ自動車が募集を予定しているAA種類株は、毎期配当金が支払われます。配当金は発行価格の0.5%(初年度)ですが、2年目以降は1.0%。1.5%、2.0%、2.5%と5年目まで0.5%ずつステップアップしていきます。6年目以降の配当金の割合2.5%は変わりません。
仮に5年間保有した場合に均すと、1.5%になります。平成27年6月5日の終値現在のトヨタ自動車普通株の予想配当利回りは2.36%ですから、普通株よりは配当利回りは低いことになります。
AA種類株は譲渡制限が付いているため、証券取引所の上場規則上、譲渡制限のある株式は上場できないため非上場となっています。譲渡制限があるため自由に売買することはできませんが、概ね5年経過した場合は、次の3つの中から選択することができます。
1. 普通株式に1対1で転換する。2.種類株のまま保有を続ける。3.発行価格で取得(買取)を請求する。
この3つの中から目を引くのは、3の発行価格でトヨタ自動車が買い取ってくれることです。発行価格は投資家から見れば「元本」になるわけですから、事実上元本保証の商品と言い換えることができるのです。
発行価格は発行価格決定日の普通株式の終値の120%以上と予定されていることから、トヨタ自動車の株式へ投資したいと考えるならば、普通株式を購入した方が、配当利回りも高く、投資金額も少なく、かつ株価が上昇した場合の売却益も多くなるのです。AA種類株はトヨタ自動車が事実上元本保証をしていることから、リスクがほとんどない分、株価が大きく上昇した場合でも、普通株式に比べて売却益が少なくなるというわけです。
そこで、AA種類株と名称はついていますが、株式ではなく債券と考えれば、非常においしい商品といえるでしょう。元本は事実上保証されているうえ、5年間保有した場合の配当収入(利回り)は1.50%になるのです。6月に募集が行われたソフトバンク債、償還期限5年、利率1.36%を上回る高利回りなのです。格付けはたぶん付与されないと思われますが、仮に付与されたとしたらソフトバンクよりも高格付けになるはずです。
本来、格付けが高ければ低金利になるはずが、格付けが高くて高金利なのですから、おいしい商品となるのです。
株主総会の承認が必要
募集株数は5000万株を上限としていますが、払込金額の下限を1株6000円と定めています。最低投資株数は1単元=100株と普通株式と同じですが、平成27年6月5日のトヨタ自動車の終値から試算すると、発行価格は100万円前後になりそうです。見方を変えれば事実上の高利回り社債と言えるトヨタ自動車のAA種類株ですが、2015年6月16日の株主総会で承認されなければ発行することはできません。海外投資家の米国グラスルイスは賛成を表明していますが、米国のインスティテューショナル・シェアホルダー・サービシーズ(ISS)は安定株主が増え経営の規律が失われるとして反対を表明しているのです。
すべては株主総会次第ですが、承認され募集が行われれば申し込みが殺到すると思われるトヨタ自動車AA種類株。債券と考えるなら損のない商品と言えるでしょう。