水と共に生きてきた群馬・板倉町
農業が盛んな板倉町。その豊富な農産物を見れば、 “水からもたらされる恩恵” がよくわかります。ただ、それだけではなく、治水技術が発達していなかった昔は、度々水害 (地元の人はおおみずと呼ぶ) も発生していたそうで、 “水と戦いながら共存してきた町の歴史” も忘れてはいけません。現在、川下りに使用されている揚舟(あげぶね)は、名前の通り “揚げておく舟” 、つまり普段は陸上にあり、家の軒下に吊り下げておきますが、水害の際に人や財産を運ぶために使われた緊急移動手段でした。板倉町では、平成14年(2002年)から始まった「揚舟(あげぶね)谷田川めぐり」が人気です。利根川に並行して流れる谷田川(やたがわ)に小さな舟を浮かべ、船頭さんが竿一本で舟をこぎながら案内してくれます。
谷田川の舟下りで江戸時代にタイムトリップ!
春と秋に期間限定で運行される揚舟は、6人も乗るといっぱいになってしまう小さな舟で、谷田川を40分ほどかけてゆったりと周遊します。ライフジャケットを身に着け、日よけのすげ笠をかぶったら準備OK! 舟に乗り込み、船頭さんの案内をききながら小さな舟旅がスタートしました。
舟の上からは川辺の美しい風景や、川面に映し出される木々の姿など、自然豊かな景色が見られます。野鳥のさえずりを聴きながら、のんびりとした時間が過ぎてゆきます。まだ車などなかった江戸時代、米や野菜、人など様々なものが利根川から江戸まで運ばれていました。揚舟に乗っていると “時間はかかるが風情はある” という江戸時代の水運文化を疑似体験できる感じです。
板倉町では高台に設置された「水塚(みつか)」 も見られます。昔の防災倉庫のような建物で、水害から人や家財道具、食糧などを守るためにつくられた水防建築です。家の敷地内に、母屋の二階の床の高さ(谷田川堤防の高さとも一緒)と同じくらいになるように小高く土を盛り、そこに建てられた特徴ある建物です。
ここには米や味噌、しょう油などの食料品のほか、衣類や炊事道具、家具などを保管しておいたほか、牛や馬をつないでおけるスペースもあったそうです。
そして、母屋や納屋などの軒先に吊るされていたのが揚舟です。漁に使われる舟と違い、水害の時に移動手段として使われていたため、よく見ると船底が浅い構造になっています。このように、「水塚」 や 「揚舟」 など、地域の人の手によって守られてきた独特な景観が文化財の一つとして位置づけられ、「重要文化的景観」にも選定されているそうです。
歴史の話や、周辺に生息する動植物の話をききながら40分ほど。あっという間の舟旅でした。また、川を周遊しながら船頭さんが舟歌を歌ってくれるときもあります。この日も「相撲甚句(じんく)」や、板倉の名所を歌詞のなかにちりばめてある「板倉名所」などを歌ってくれました。高層ビルなど視界に入らず、目の前は水と緑だけ。昔の歌をききながら、のんびりとした舟下りを楽しめました。
揚舟は春の運行が このあと6月いっぱい。そして秋の運行は9月~10月までとなっていて、毎週末と祝日に運行されます。
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■揚舟・谷田川めぐり
住所 : 群馬県邑楽郡板倉町大字岩田2941-3 群馬の水郷公園
運行時間 : 10時~16時
料金 : 大人1000円 (小学生以下は無料)
アクセス : 東武日光線「板倉東洋大前駅」下車、タクシーで「群馬の水郷公園」まで約10分
問い合せ : 板倉町産業振興課産業振興係 / 0276-70-4040
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