ドン・キホーテの作者、ミゲル・デ・セルバンテスは、「昼食と夕食は少しのほうがいい、健康というものは胃の中で作られるものだから」と言い残しましたが、美食はオペラに似ています。

深く味わうには、少しづつ、一口ずつがいいのです。よく、満腹でオペラ鑑賞に出かける人がいますが、そういう人は途中で寝入ってしまうか、演目が永遠に思えることでしょう。

映画でも、音楽でも、お腹がいっぱいでは楽しむのは難しいものです。反対に、空腹すぎても、歌手や音楽に集中できないので、おにぎりやサンドイッチなどの軽食を口にするか、飲み物を飲んでから出かけるといいでしょう。


偉大な美食家、ロッシーニ

オペラは美食と深い関係があります。その好例が、有名なセビリアの理髪師を作曲した偉大な作曲家、ロッシーニです。

ロッシーニにとって美食は、作曲と同じくらい大事な職業だったようで、食べるだけではなく、彼自身が料理をすることを楽しんでいました。今でもロッシーニのレシピを掲載している料理本は少なくありません。

ロッシーニのユーモアのセンスは独特で、皮肉でありながらも、微笑を誘うもので、大好きなトリュフのことは「野菜のモーツァルト」と呼んでいました(ロッシーニはモーツァルトを心から敬愛し、彼の音楽に多大な影響を受けています)。

ロッシーニのレシピにはフォアグラも欠かせない材料で、彼が考案した「カネロニのロッシーニ風」には、フォアグラ、トリュフ、ワイン、ベチャメルソースが使われています。


美食家ロッシーニの名言

ロッシーニ

この世の2大快楽=音楽と美食

ロッシーニは怠惰な性格で、ベッドから起きずにパジャマのまま作曲することもあったといわれています。暇なときには、「空腹は私たちの情熱を指揮する指揮棒だ」とか、「食べ、愛し、歌い、消化する。この4つの行為こそが人生という喜劇オペラを指揮する」など、食に関係する名言を考えて過ごしました。

ロッシーニは、本当は、鬱傾向の強い性格で、食べることが一番の抗鬱剤だったのでしょう。


父の死に匹敵するほどの出来事とは

ロッシーニの食に対する情熱は、こんなエピソードからもうかがえます。彼は、人生で2度だけ泣いたといわれています。一度は父親が亡くなった時、もう一度はトリュフをまぶした七面鳥の肉を船縁から落としてしまったときです。

財産を「完璧なマカロニ」製造機に費やしたことも知られています。彼が作った “ロッシーニのトゥルヌドー”は、最高級の牛肉のサーロイン部位をバターでいため、フォアグラの薄切りとマデイラ島のワインでアクセントをつけたレシピです。

ここまで読んでいただければ、皆さんは、ロッシーニが肥満体型であり、心臓病を患っていたと簡単に想像がつくことと思います。実際に、鬱病からも回復することはなかったようです。それでも、口を動かしている最中には鬱々としながらも楽しんでいたことでしょう。



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