お茶屋として使われた時代もあった
この町家は、150年という長い歳月のなかで幾たびか増改築がおこなわれており、お茶屋として使われた時代もありました。2階へと上がる階段が3ヶ所も設けられていたのは、お客どうしが鉢合わせしないための配慮だったようです。カフェの壁には、その階段を外した痕跡が残されていました。
私が座ったテーブルのすぐ横の壁には、押入れ階段があったことを示す斜めの線がありました。かつて京町家では、省スペースのために押入れの中に急な階段を設けたのです。
1階の天井がそのまま2階の床板となる、独特の造りの「大和天井」。床の三和土は「大工さんに混じって自分でも叩いたので、意図しない凹凸ができてしまった」と店主の小林さんは笑います。
和のものも、洋のものも、小林さん夫妻が直感で選んだ家具や道具がさらりとセンス良く置かれており、心地よいくつろぎを生み出しています。過剰なこだわりは、時としてカフェを息苦しくさせてしまうものですが、この空間には肩の凝らない魅力がありました。
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