まずは周りの大人がネガティブな決め付けを口にしないこと
・「うまくできない」のも「成長の過程」と捉える成長というのは、「一直線」に上を向いて伸びていくわけではありません。時に下降し、横ばい状態が続き、ぐぐっと伸び、また後退し、そんな「でこぼこな線」を描きつつ、少しずつ伸びていきます。ですから、そうした成長の過程を切り取り、「この子は~だ」と決め付ける言葉を、まずは安易に口にしないことです。子供は日々変化しています。横ばいに見えるのも、その後一気に伸びる準備をしている時なのかもしれません。
・改善へ向けて具体的サポートをする
簡単な計算に苦労しているのなら、手に取ることのできる物を用いた練習により「数のセンス」を身につけることで、よりスムーズにできるようになるかもしれません。跳び箱を飛べない子も、より適した姿勢を身につけることで、高い段が飛べるようになるかもしれません。ある場面では一切話すことができなくなってしまう子は、場面緘黙(かんもく)症の専門家などによる適切な働きかけを取り入れることで改善していくでしょう。長い目で見守りつつ、その子自身のペースでその子なりに改善していけるよう、具体的なサポートをしていきましょう。
子供自身に跳ね返す力をつけましょう
ネガティブな決め付けを跳ね返せ!
何度も失敗を乗り越え何かができるようになった!という体験を持つ子は、ちょっとやそっと周りからネガティブな言葉をかけられても、「でも頑張るなら、私/僕にだって、できるようになるんじゃないかな」、そう跳ね返すことができます
・用いる言葉を変える
普段子供と交わす言葉を変えてみましょう。
どうせ無理 → どうしたらできるようになるかな
できるわけがない → 他にどんなやり方があるだろう
難しすぎる → これは時間と努力が必要ね
子供達が、ネガティブな決め付けを跳ね返せるような言葉をかけてやりましょう。
・ネガティブな決め付けを跳ね返し活躍する人々の例を示す
「ステレオタイプの脅威」を跳ね返すには、「ステレオタイプ」から外れる「例外的」な人物像を示すことが効果的と分かっています(#2)。女性の数学者や、経済的に恵まれない家庭に育ちつつも学業面で成功した人々を示し励ましていくのです。天才とされたアインシュタインも学校では「落ちこぼれ」だったしね、ウォルト・ディズニーなんて「想像力とアイデアに欠けている」という理由で新聞社を首になったのよ。そうネガティブな決め付けを跳ね飛ばし大成功した多くの人々の生き様についても伝えてやりましょう。
筆者の知り合いに、子供時代からパイロットに憧れ、日本で短大を卒業した後アメリカに渡り、今はジャンボジェットパイロットのキャプテンをしている日本女性がいます。小さな頃から、「パイロットなんて男の仕事だから無理」と周りから繰り返し言われ、でも飛行機が大好き!と夢を追い続けた末のことです。話を聞くと、彼女の親御さんは常に、「あなたがしたい思うのなら誰が何と言おうと思う存分やってみなさい!」そう声をかけ続けたそうです。
子供は、今も、そしてこれからも、様々な「ネガティブな決め付け」に出遭うでしょう。周りにいる大人として、子供達がそうした決め付けを跳ね返し、可能性を最大限生かしこれからの世界へと羽ばたいていけるよう、助けていきたいですね。
出典:
(#1)Steele CM and Aronson J. 1995. Stereotype threat and the intellectual test performance of African-Americans. Journal of Personality and Social Psychology, 69, 797-811.
(#2)McIntyre RB, Lord CG, Gresky DM, Ten Eyck LL, et al. 2005. A social impact trend in the effects of role models on alleviating women's mathematics stereotype threat. Current Research in Social Psychology, 10, 116-136.