今もまったく色あせていない「ロマンポルノ」
いわゆるピンク映画は1960年代から制作されていた。そこへ70年代初頭、大手映画会社日活が参入する。少ない制作費で作られていたピンク映画界だが、日活にはお金も人も技術もあった。他のピンク映画との差別化なのか、日活は、「日活ロマンポルノ」と銘打った。第一作は、『団地妻 昼下がりの情事』である。当時、都内にたくさん建てられていた団地。そこに生息する人妻たち。なんともうまいタイトルである。
ロマンポルノは、17年間で1100本も作られた。10分に1回程度の濡れ場さえあればいいという緩い制約の中で、当時の若手監督たちが生き生きと映画を撮っている。作品はだいたい70分前後。観客も気楽に観られる長さだ。
当時はもちろん、男性客が多かったが、意外と女性客もいたらしい。学生運動が盛んで、ちょうどウーマンリブが日本に入ってきた70年代、「男が観るものは女も観るべし」と感じていた女性も少なくないのだろう。
ロマンポルノはビデオ等に押され、80年代後半で制作を終えたが、熱烈なファンはいまだに多い。3年前、日活が100周年を迎えたとき、ロマンポルノの特集も各地でおこなわれた。都内及び近郊では、学生を含めた20代の女性客が多く、私も驚いたものだ。
彼女たちに、ロマンポルノのどこがおもしろいのか聞いてみた。
「今のAVと違って、ストーリーがあって女性の心理もきちんと描かれている」
「ロケが多いので、当時の渋谷や新宿などの繁華街が観られて興味深い。70年代ファッションもおもしろい」
「そこはかとないエロスがいい」
そして私がつけ加えたいのは、監督たちは、決して女性を上から目線で見てはいない。むしろ、女性への圧倒的崇拝と畏怖さえ感じさせる作品が多い。
ロマンポルノと一口に言っても、ジャンルはさまざま。社会に問題提起するような硬派なものから,お気楽コメディまで、非常に幅が広い。
そして、その映画のひとつひとつに、「男女の機微」がつまっている。勢いにせよはずみにせよ、熟慮の結果にせよ、男女の行き着く先のひとつはセックスであり、そこから関係も人生も変わりうることが身にしみてくるのだ。
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