神様が住む山・赤城山
群馬県のほぼ中央に位置する赤城山。日本百名山や日本百景にも選ばれていて、春の桜シーズンに始まり、初夏には様々な種類のつつじが咲き、夏の避暑、秋の紅葉、冬は湖でのワカサギ釣りなど、季節ごとに違う魅力があり、一年を通じて多くの観光客が訪れています。そして、もともと “神様の住む山” とも言われる赤城山が、近年パワースポットとしても注目されているようです。特に赤城山頂にある湖の守護神が女性の神様ということで、「女性の願掛けにご利益がある」と、赤城神社の宮司さんも話していました。
富士山に次ぐ裾野の長さと言われる赤城山は、山頂部と南部は前橋市、西部は伊香保温泉などがある渋川市や昭和村、北部は沼田市、東部は桐生市とみどり市にまたがっています。このため、広大なエリアを地元の人は「赤城の南面(前橋市や渋川市など)、北面(沼田市や昭和村など)」と呼び分けています。また、「赤城の山も……」のセリフで有名な国定忠治が生まれた村(現在は伊勢崎市に編入)は、赤城の南東部に位置しています。
赤城の山頂には火口湖である大沼や小沼のほか、覚満淵(かくまんぶち)と呼ばれる湿原もあり、整備された遊歩道を歩いていると珍しい高山植物も見られ、都会では味わえない大自然や開放感を求めやってくるハイカーたちにも人気のスポットです。
赤城山への玄関口・前橋から大鳥居をくぐって山へ向かおう!
首都圏から車で約2時間半、前橋市内からは約50分で到着するアクセスの良さも、赤城の人気の要因かもしれません。電車の場合、最寄駅となるJR前橋駅からは赤城山直通バスが運行されています。1日4本、土・日・祝日のみの運行ですが、前橋駅の6番バス乗り場から赤城山頂にある赤城山公園ビジターセンターまで直通運転してくれる嬉しい交通手段です。また、前橋駅の構内には観光案内所もあるので、旅に出る前に地元情報を手に入れられるのでとても便利です。
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関越交通の赤城山直通バス
運行日:土日祝日のみ
URL : http://kan-etsu.net/publics/index/42/
(ここから詳しい時刻表や料金などの情報が見られます)
前橋市内から赤城山方面へ県道4号線(前橋赤城線)を進んでいくと、巨大な鳥居が見えてきます。これは赤城神社の「一之鳥居」として昭和40年代に建てられたもので、前橋市富士見地区の郷土カルタにも『赤城の玄関 赤鳥居』と詠まれています。実際に大きな鳥居のすぐ脇には、カルタの内容を説明する看板も立てられていました。高さ20メートルほどある真っ赤な鳥居は「赤城の大鳥居」として人々に親しまれています。
赤城の山頂に向かうときに通るルートのひとつでもあるため、この鳥居をくぐると「いよいよ赤城山」という感じが増すほか、ここを境に何だか特別な場所へ向かうような感覚、そして見えないパワーのようなものを感じます。赤城神社に置かれていた神道を解説する本にも、鳥居の説明として “ここからが神様の鎮まる神聖な場所であることを示す門のような役割を持っている” と、書かれていました。なるほど、こんな気持ちになるのもうなずけますね。
実は、この鳥居は二代目だそうです。初代の旧鳥居は、今から254年前の江戸時代に、赤城山信仰のシンボルとして、そして天明3年の浅間山の大噴火に伴う飢饉を鎮めるため、村人によって建てられました。その後、昭和40年代に赤城県道の有料道路建設のため、山頂の赤城神社内に移設されましたが、風雪による痛みが激しくなったことから、再び現在の大鳥居のある県道からほど近い小暮神社に移築されたそうです。
そして、現在の大鳥居の真ん中に掲げられている扁額(へんがく)に書かれた「赤城山」の字は、江戸時代の書家であった角田無幻(つのだ・むげん)の書で、よく見ると「山」という字が山の連なる形をしているところも特徴的です。
この扁額も二代目で、平成23年に鳥居が塗り替えられたときに掛けかえられたそうで、昭和40年当時の額は、山頂にある赤城公園ビジターセンターに保管されています。鳥居のレプリカと、国定忠治を彷彿とさせる股旅のコスチュームが用意されており、 “忠治気分” で記念撮影することもできますよ。道路からでは小さく見える扁額ですが、実際には縦が約2メートル、横が約1.5メートルと、かなり大きめだということがわかりました。
空の青、木々の緑、神社の赤が映える赤城大沼
赤城山は古くから “神様が住む山” として人々に信仰されてきました。このため、赤城神社も山と湖がご神体となっているそうです。神社の宮司さんの話では、神様が天上界から地上界に降りてくるときに、一番近いところである山に降りてくると考えられていたほか、古い信仰では、神様は山の上や湖の沖の島など、人間界とは別の世界に住んでいるとも信じられていたそうです。赤城神社も、大沼の小鳥が島にあり、湖畔から朱塗りの橋を渡って参道へ向かいます。鳥居同様、この橋もここからが神聖な場所と強く感じさせてくれるところです。
朱塗りの橋に、赤い鳥居、参道に並ぶ燈籠や神社の社殿も赤く、とても印象的です。湖と空の青、木々の緑との絶妙なバランスも絵になります。宮司さんの話によれば、赤という色は、元来 “魔除け” の意味があり、様々なものから守るという意味合いもあるそうです。また、湖畔にある神社のため、水辺が参道になっています。この大沼の水は、関東平野に流れていき、田畑を潤す水として、また飲み水として使われます。このため、農耕(豊作)の神様や、生命(健康)をつかさどる神様として信仰されています。
赤城神社に古くから伝わる伝説の中に、とても美しい三人のお姫様が登場する伝説があります。赤城姫と淵名姫(ふちなひめ)、そして伊香保姫という三人の美しいお姫様がいたそうですが、そのうちの赤城姫と淵名姫が、不幸にも亡くなってしまったあと、赤城大明神に召されたという伝説から、赤城神社は恋愛の成就、縁結び、安産、子育てなど、女性の願掛けに大変ご利益があるとされています。
最近では外国からの参拝者も多いほか、数年前からのパワースポット人気もあり、県外から訪れる人も増えているそうです。このため、赤城神社には外国語のおみくじもあります。英語と日本語で書かれているため、外国人観光客だけでなく、高校生や大学生などが興味を示し、おみくじをひいていく人も多いそうです。また、毎年8月の第一土曜日に行われる夏祭りでは、本格的な流鏑馬(やぶさめ)も披露されるので、日本の伝統行事に興味のある方は、この時期に訪れてみてはどうでしょうか。
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赤城神社
住所 : 群馬県前橋市富士見町赤城山4-2
電話 : 027-287-8202
FAX : 027-287-8177
URL : http://akagijinja.jp/
赤城の “ミニ尾瀬” 覚満淵(かくまんぶち)
大沼の南東側、赤城公園ビジターセンターの向いに位置する湿原が覚満淵(かくまんぶち)です。木道を歩きながら一周30分ほどのハイキングが楽しめます。この木道には群馬県産の間伐材が再利用されているようで、沼のほとりには「湿原の美しさを楽しむとともに、木の持つ温かみや優しさを感じてください」というメッセージボードも設置されていました。
この場所は春から夏にかけてミズバショウやレンゲツツジ、ニッコウキスゲなどの高山植物が咲き、秋は紅葉、冬は沼が凍結し、北海道がそのまま現れたような雪景色が見られるなど、四季折々に違う顔を見せてくれます。また、野鳥がたくさん訪れるため、野鳥観察にも適した場所です。覚満淵の澄んだ水は、覚満川を流れ大沼に注いでいます。豊かな水と緑に囲まれた湿原は、「ミニ尾瀬」とも呼ばれています。
覚満淵の全景を写真におさめるなら、鳥居峠からの角度がおススメです。湿原の中にいると沼のほとりにいるような感じだけですが、鳥居峠から覚満淵全体を見下ろす角度で写真を撮ると、ここが湿原だということがよくわかります。また、鳥居峠の駐車場から数百メートルくだったところには「御神水」が湧き出ています。この水で身を清めると無病息災に効果があるということで、水を汲みに来る人もいるそうです。
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赤城山ポータルサイト
URL : http://akagi-yama.jp/