スマートハウス・エコ住宅/スマートハウス・エコ住宅の基礎知識とトレンド

断熱性・気密性・省エネにこだわった家づくりの情報

ハウスメーカーをはじめ、工務店や設計事務所においても積極的に「省エネ住宅」に取り組むところも増えてきました。しかし、どの専門家が本当にどういった知識を元に提案しているかどうかは分かりにくいものです。そこで今回は、省エネ住宅に積極的に取り組んでいる団体を紹介しながら、お施主さん自身でしっかりと勉強して情報を見極める目を持ち、トラブルを事前に防ぐための方法をお伝えします。

八納 啓造

執筆者:八納 啓造

幸せになる家づくりガイド

省エネ住宅が普及しはじめ、2020年を目途に次世代省エネ基準の義務化に向けて省エネ住宅のつくり方に関して関心を持つ専門家や一般の方も増えてきました。

しかし、省エネ住宅に関しての専門家の知識もまちまちで「この断熱材を活用すれば温かい家が出来ます」というキャッチフレーズで実際に家を建てても、思っていたよりも冬寒く、夏は家の中が熱くなりすぎで、トラブルになるケースも後を絶ちません。

その理由は、キャッチフレーズの背景の根拠です。これから省エネ住宅を考える上では、どういった根拠を背景に省エネ住宅を提案してきているかを把握する視点がこういったトラブルを防ぐ鍵になってきます。

ここで大切なのは、高断熱高気密、省エネにこだわった家づくりがしたかったら、お施主さん自身でもしっかりと勉強をして、これらの情報などを見極める目、視点を持つことです。

そこで今回は、省エネ住宅に積極的に取り組んでいる境界、団体を4つご紹介しますし、そこで今回は、曖昧なキャッチフレーズの根拠を見抜くための、「依頼先への質問」を伝授します。

2015年undefinedドイツBAU会場の様子

2年に一度開催されている世界最大の建材見本市。省エネ住宅の各団体とも積極的に情報収集を行い、日本での省エネ住宅の普及にいそしんでいる



どのような団体があるのか?

省エネ住宅を研究している団体は自主的に活動しているものも含めるとかなりの数になってきました。ここでは、私も勉強会に参加したり、所属していたりする主に全国的に積極的に活動している4つの団体をご紹介します。まずは4つの団体名をご紹介しましょう。

「NPO法人 新住協」
「自立循環型住宅研究会」
「一般社団法人パッシブハウスジャパン」
「日本エネルギーパス協会」


ではこれらを個別に紹介していきます。

NPO法人 新住協

北海道や東北地方を中心に大学機関や工務店、設計事務所、建材メーカーが集い、北海道や東北地方で家の高断熱化を研究し、その普及活動に取り組んできている老舗の団体です。現在では、北海道と東北地方以外にも各地域に広がっています。特に「Q1.0(キューワン)住宅」という高断熱住宅を目標と掲げ、暖房エネルギーを次世代省エネ基準(Q値2地域1.9、3地域2.4)の1/2~1/4以下に削減させることを目指しています。
※Q値:熱損失係数 どれだけ家の内外に熱が逃げやすいかを示す数字。詳細はこちら
また、同団体が提供している温熱環境シミュレーションが出来るソフトQPEX(キューペックス)は、工務店や設計事務所にも広く普及しています。また、この後も各団体で取り扱っている温熱環境シミュレーションソフトを紹介しますが、実際の建物の性能を検証するには必須ですので覚えておきましょう。室蘭工業大学教授だった鎌田紀彦先生が中心的な人物です。

自立循環型住宅研究会

(財)建築環境・省エネルギー機構発行の「自立環境型住宅への設計ガイドライン」をテキストとして使用し、その理解と実践を普及に務める会です。このテキストは、高断熱・高気密住宅のテキストとしても専門家の中でも普及しています。またこの団体は国の基準で省エネを普及させ、そして実際に住んだ後の検証を繰り返しながら技術レベルをより深めて行くことを主眼に活動しています。温熱環境シミュレーションが出来るソフトとして、Thermal-c(サーマルシー)があります。住まいと環境社の野池政宏氏が代表を務めています。

一般社団法人パッシブハウスジャパン

世界の中でもトップクラスの省エネ基準であるドイツの「パッシブハウス」基準を視野に入れながら、世界基準の家造りを普及させるべく工務店や設計事務所、建材メーカーを中心に勉強会などを開催しながら「ドイツ基準を日本に広める」ことを軸に全国的に活動している団体です。

建築設計事務所のKEY ARCHITECTSの森みわ氏が代表、松尾設計室の松尾和也氏が副代表を務めています。代表の森みわ氏が長年ドイツを拠点に省エネ建築の設計に従事してきたこともあり、ドイツのパッシブ基準の日本版の認定のサポートも行っています。また、2日間の講習で省エネ建築が提供出来る知識と技術力を身につけた人には、省エネ建築診断士という資格を発行しています。温熱環境シミュレーションに関しては、「建物燃費ナビ(株式会社CPU)」のソフトを活用し、Q値や1次エネルギー算定以外にも、年間の光熱費算定などの精度にも定評があります。私もこの団体に所属しています。

日本エネルギーパス協会

欧米で省エネ建築の評価方法として普及しているエネルギーパスという考えを日本に普及すべく工務店、設計事務所、建材メーカーを中心に全国的に普及活動をしている団体です。実際に欧米での不動産評価にもこのエネルギーパスが広がっています。エネルギーパスとは国際ISO基準にのっとったもので、この団体はこれを日本の基準に近づけて申請事務つに活用できるよう取り組んできました。代表理事は 今泉太爾氏。二日間の講習受講と試験に合格することでエネルギーエージェントという資格を取得することが出来ます。

最終的には、設計士と工務店の実績を体感することが重要

個人的にも各団体の勉強会に参加したり、所属させていただいたりしていますが、それぞれの考え方は、素晴らしいものでどの団体の考えも「本当にこれから必要な省エネ建築の形」を模索しながらそれを普及させるために真摯に探究&普及活動を行っています。また今回紹介していないその他の団体もそれぞれがその普及活動に積極的に取り組んでいると実感しています。

はじめにも言いましたが、「○○の断熱材を使っているのでこの家は温かい」というフレーズを使っていて、実際にQ値計算なども行わずに、イメージだけで言っている造り手側もいます。そして、実際にそれで建てた方と造り手との間で訴訟に発展するようなことも起こっています。

こうならないためにも大切なことは「省エネの根拠を一緒に提示してください。どういった温熱環境シミュレーションソフトを活用していますか?」と聞いてみることです。

そして、出来るならその造り手が実際に建てた住まいを体験させてもらうといいでしょう。

※記事内容は執筆時点のものです。最新の内容をご確認ください。

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