ハトヤで玉子ドッグをいただく


 高見順は、1907年(明治40年)、福井県で生まれている。翌年、母親とともに上京し、いまの東大の文学部に進学し、卒業後はコロンビア・レコードに就職。その後、作家活動に入り、人気作家になっていくのだが、1965年(昭和40年)に58歳で食道がんにかかり、この世を去った。

小説『如何なる星の下に』が書かれたのは高見順が30歳前後のころ。浅草でのいろいろな人間に会うことで、ストーリーが進んでいく。人と会い、話をする場所が先のお好み焼き屋の惚太郎だったり、喫茶店だったりする。

何度も出てくる喫茶店は「ボン・ジュール」。実在したのは「ボン・ソワール」という名前の喫茶店だが、今はない。小説に登場し、現存しているのは「ハトヤ」という喫茶店だ。引用してみよう。

喫茶店「ハトヤ」の前に来ていた。人ろうかと、ドサ貫(かん)とバーテンダーのどちらへともなく言って暖簾(のれん)から覗(のぞ)くと、満員であった。ここはいつだって満員でない時はないが、客の多くは六区の小屋の人々で、それが一杯五銭のコーヒーでほっと一息ついているのや、ホット・ドッグの腸詰の代りにカレー・ライスのカレーを入れたカレー・ドッグというのを頬(ほお)ばっているので、狭い店のなかはいっぱいである。
(「如何なる星の下に」(講談社文芸文庫)209ページ)

というわけで、ハトヤさんに行ってみた。あれっ、閉まっているぞ。なんだか、胸さわぎがする。
1927年(昭和2年)創業のお店

ハトヤ 東京都台東区浅草1-23-8

何やら張り紙があるぞ。それによれば、しばらくの間、平日は休業するとある。
土日、祝日のみの営業になるとあった。

「しばらくの間 平日は休業します」という貼り紙

閉店したのかと思ったら、そうではないようだ。よかった。というわけで、日曜日にうかがった。
ホットドッグが売りのお店のようだ

看板には「ハトヤ」「珈琲」「ホットドッグ」といった文字があった

数年前、友人と訪問したのだが、記憶違いでなければ、かなり高齢の女性がやっていらっしゃった。いまはその息子さんなのだろうか、それくらいの年格好の方がやっていらっしゃった。
どちらも400円だ。

メニューにはホットドッグと玉子ドック

小説に出てくる、“カレーライスのカレーを挟んだカレー・ドッグ”はないようだ。ちなみに小説では「ドッグ」となっているが、お店のメニューは「ドック」だ。それでは、珍しい玉子ドックをいただいてみよう。
セットにすると50円引きとなる。

珈琲400円、玉子ドックは400円。

塩が提供されたので玉子ドックは薄味かと思ったら、しっかり味がついていた。

初めて食べる味だね

ケチャップたっぷりの玉子ドック

熱々の玉子焼きがパンにはさんである。初めて食べたが、なかなか旨い。ちょっと小腹がすいた時にいいかんじだ。

■ハトヤ
東京都台東区浅草1-23-8
[土日、祝日]
8:00~18:30
平日は休業