23歳、世界チャンピオンになったとわかったところで……
3月28日、世界選手権での優勝がほぼ決まったときの彼の表情は、この8年間の中で、一度も見たことのないものでした。驚きと戸惑い……まったく予期していなかったけれど、本当は長い間夢見てきたことが自分の身にも起きたようだとわかった、という表情。
この場面はテレビ放送でも流れていたと思います。
いつもおどけたりふざけたりして「優勝は本当に考えていないんだ。いい演技をしたいだけなんだよ」と言っている23歳の彼の、普段はおいそれとは見せない本当のところがふいに出てしまった表情。とても人間的で、彼という人が出たシーンでした。
彼にとっては、世界選手権で今シーズンの試合は終了になります。今シーズン前半は、グランプリシリーズを休んで休養にあて、後半から試合に出場しようと考えていた彼ですが、自国スペイン・バルセロナでのグランプリファイナルのため、休養は取りやめ、シーズンをフルに戦ってきました。
来シーズンも再びグランプリファイナルはバルセロナ。再び、シーズンを休まず、グランプリファイナルのプロモーションなどにも尽力することでしょう。
その前には、日本でのアイスショーにも出演する予定です。またいつものようににこやかで楽しい演技を見せてくれることと思いますが、心の中であの表情を思い出しながら、世界選手権の表彰台の一番高いところまでの彼のこれまでの日々を祝福しつつ、楽しみたいと思います。