「不幸」という名前のベルギービール

マルール ビエール ブリュット

マルール ビエール ブリュット

マルール ビエール ブリュットはアントワープの南西、東フランデレン州デンテルモンデの外れブッヘンハウトにあるマルール醸造所で造られています。ドゥ ランツヘール家が代々営む醸造所は、1800年代中盤から醸造を開始しましたが、第二次世界大戦間際に閉鎖、1997年に見事に復興しました。現在ではベルギーを代表するスペシャルなビールを造る醸造所に なりました。マルール醸造所の造るビールの特徴は、纏まりがある現代味で、ハイセンスな味わいというところでしょう。シリーズ名のマルール(仏)とはバッドタイミング、不幸という意味です。「目の前の不幸を飲み干して幸せになる」「幸せになって欲しい」といったところでしょう。とはいえ「不幸」という名前を付けるのは、さすがベルギー的エスプリが効いてます。

シャンパーニュ製法

マルール ビエール ブリュットは、ビールではとても珍しいシャンパーニュ製法という醸造方法を用いています。シャンパンは多くの瓶内二次発酵のベルギービールと同じように、瓶内で熟成する際に沈殿物が発生します。沈殿物を取り除き、よりクリアな味わいを目指すために幾つかの工程を行っています。1.熟成中の瓶を逆さまにして、ゆっくりと時間を掛けて瓶の首の部分に澱を溜める「ルミアージュ」。2.澱が溜まった口の部分だけを、-20℃程度の溶液に漬けて凍らせ、塊にして飛び出させる「デゴルジュマン」。3.同質のワインに糖類を溶かしたリキュール デクスペディション(門出のリキュール)を補充する「ドサージュ」。マルールは麦汁を足しているそうなので、「ウォート デクスペディション(門出のウォート)」なんて呼び方はどうでしょう?

透明感のある色味とクリアな味わいを目指すとはいえ、フランデレンで造ったビールをシャンパーニュ地方に持ち込み、「デゴルジュマン」してまたベルギーに戻す。手間の掛け方と情熱に脱帽です。

マルール ビエール ブリュットとは / MALHEUR BIÈRE BRUT 

色は透明感のある黄色がかったブロンド、香りはハチミツ感が強く、洋梨、熟したパイナップル、控えめで少しくぐもったホップと発酵香も感じます。余韻の長いしっかりとした甘さと、アルコール感で飲み応えも充分。個人的に勧めするのは少し低めの7℃程度で抜栓して、ゆっくり時間を掛けて飲んで欲しいですね。ビールの温度変化と高アルコールビール特有のゆっくりとした酸化、摂取したアルコールの回り具合も時間を掛けて楽しめます。

マルール/MALHEURシリーズは、手間と時間を充分に使ったハイセンスなビールでありながら、ペレット(圧縮)ホップは使わないなど強いホップへの拘りもみせています。「以前ホップの栽培をしていたから」ということですが、大戦前の封鎖、醸造所全体の並々ならないこだわりとバランス感は、多言語、多民族等の地理的な部分だけではない、ベルギー的な独自の拘りと葛藤が見え隠れしているのだと思います。

次頁ではマルール ビエール ブリュットにピッタリな料理を紹介します。