機械に全ての仕事を奪われるわけではない?まずは少しずつ行動を

働く環境が急変している今、どうする?

働く環境が急変している今、どうする?

働く環境が大きく変わりつつある今、ふと気づけば、自分のスキルが“錆びついた刀”になっているケースも――。予測の難しい時代といわれる今、私たちはどんな風に働き、どのようにスキルを伸ばしていけばいいのか…。“生き残る人”になるための方法を、「40歳定年制」を提言している東京大学大学院の柳川範之教授が指南します。(第1回目インタビュー『40歳定年制とは?あなたの仕事がなくなる2つの理由』から続きます)

――ITのさらなる加速化、そして新興国の人々の急激なスキルアップにより、私たちを取り巻く環境が大きく変わっていくと、前回伺いました。そのスピード感についていけない人々は、今後どんどん“弾き出される”可能性が高くなる。私たちの仕事は、本当になくなっていくのでしょうか?

柳川教授 
そうはいっても、すべてが完全に置き換わるわけではありませんよね。今もそうですが、人とコンピューターがコラボレーションをして新しいジャンルを作っているケースも多い。例えば、Amazonの評価やレコメンデーションなどは、基本的にAmazonの持っているIT技術を駆使して、その人に合ったお薦めを出してくるわけですが、裏側にあるデータベースは、書店の人が“こういう本はこういう人に売れている”などとインプットしたものがベースになっています。「食べログ」なども、そうです。人が口コミを書き、それがデータとなってコンピューター化する。全く人が必要なくなるというものは意外に少ないのではないでしょうか。うまくコラボレーションすることで、大きなバリューを持つものも多い。無人のものにすべて置き換わるわけではないと思いますね。

――新たなビジネスチャンスととらえることもできますね。

柳川教授 
もちろんそうです。まったく新しいものをクリエイトすることは、まだまだコンピューターには不向きです。ただ、専門家に言わせると、全く違うものを組み合わせて、これまでにないものを見つけることも出来るらしいのですが。とはいえ、世の中にないものを“生み出す力”は、やはり人間のほうが得意です。

――変化のスピードに振り落とされないようにするためには、“アウトプットする力”を磨く必要がありますね。「生み出す力」をつけるには、どうすればいいのでしょうか?

柳川教授 “変化に対応できる力”を備えることが大切です。生み出す力に繋がるようなアウトプットを少しずつでいいから習慣づけていく。「やれる範囲でいいから少しずつやる」と、「まったくやらない」では、雲泥の差があります。変化した時に備えて、少しでも自分に必要な勉強をしておく、新たな人と交流するなど、方向チェンジに対するマインドを持っておくことです。そういう発想を全く持たずに過ごしている人は、いざ変化が起きて嵐がくると飲み込まれてしまう。“この先大きく変わる”といわれても、その光景を具体的にイメージすることは難しいことです。ですから、変わっていく方向だけはなんとなく掴んでおいて、それに対する備えを少しずつしておくことでしょうね。

――年齢と共に、変化に対応する力が鈍りがちになるものですが、日々少しずつ変化に対応できる体質を作って、少しずつ自分を変えていくことが大切だということですね。

柳川教授 発想の転換が必要です。もちろん具体的に何かをしておくことができれば、それにこしたことはありませんが、変化を認識し、そうしたマインドを持っておくだけでも随分違う。それが変化に対応するための必須条件だと思います。

★次は40歳定年制で変わる働き方についておうかがいします

教えてくれたのは……
柳川 範之(やながわ のりゆき)さん

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1963年生まれ。東京大学経済学部・東京大学大学院経済学研究科教授。研究分野は金融。父親の仕事のためシンガポールの小学校を卒業し、高校時代はブラジルで過ごす。大検を合格後、慶應義塾大学経済学部通信教育課程卒業、東京大学大学院経済学研究科博士課程修了というユニークな経歴の持ち主。「40歳定年制」の発案者として『40歳からの会社に頼らない働き方 』(ちくま新書)が話題に。近著『東大教授が教える独学勉強法』などで、勉強することの楽しさを伝えている

取材・文/西尾英子
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