路面電車の支線の生き残り、世田谷線
世田谷線は、元々、渋谷と二子玉川(当時は二子玉川園)を結んでいた路面電車の玉川電気鉄道(通称「玉電」、のちの東急玉川線)の支線として三軒茶屋から分岐していた。しかし、本線にあたる渋谷~二子玉川が道路渋滞などのため1969年に廃止され(同区間は地下化され、新玉川線を経て、現在は田園都市線の一部となっている)、支線である三軒茶屋と下高井戸間は、道路上を走らない専用軌道だったので生き残り、世田谷線として運行が続いている。
長らく旧型車両が使われていたが、1999年より新型車両300系が導入され、今ではカラフルな300系のみで運転されている。全長5km、所要時間20分に満たないミニ路線だが、車内は一人掛けクロスシートが主体で、先頭車両の座席がいつも進行方向前向きとなる(後部車両は常に後ろ向きクロスシート)。座ることができれば、ちょっとした旅気分が味わえるのがよい。
ヨーロッパの終着駅のような三軒茶屋駅と風変わりな若林踏切
世田谷線の始発駅・三軒茶屋は地上にあり、地下にある田園都市線の駅からは、一旦改札口を出て3~4分歩いたところにある。線路が1本、両側に乗車ホームと降車ホームがある行き止まりの小さな駅だが、ドーム風の天井で覆われ、ヨーロッパの終着駅のような雰囲気を醸し出しているところが秀逸だ。全区間均一料金の150円(ICカード利用時は144円)で、カードの場合、降車時は改札機にタッチする必要はない。
三軒茶屋を出発すると、電車は300~500mおきにこまめに駅に停まっていく。二つ目の若林の手前で環七通りと平面交差する。普通の踏切は、電車が接近すると警報機が鳴り、遮断機が下りるものだが、この「若林踏切」は、電車優先ではない。電車は踏切の手前で一旦停車し、道路の横断信号が青となると同時にスタートし、歩行者と一緒に道路を渡る。通常の鉄道ではなく、路面電車である証とも言える。