「マサイマラではオフロードOK」の本当の意味
国立公園、保護区の草原には車道が敷かれていますが、この道から外れて動物に近づくこと(オフロード)は通常禁止されています。ただ、マサイマラの“マラトライアングル”と呼ばれる一部のエリアでのみ、「ビッグキャットが現われたときは、オフロードしてもよい」というルールになっています。このルールがあるため、マサイマラは規制がゆるくて、動物に近寄れるという誤解が広がっているようです。でも、オフロードしてよいのは、前ページで書いたとおり、ビッグキャット(ライオン、チーター、ヒョウ)を見つけたときだけです。サイやゾウがいても車道を外れて近寄ることは禁止です。また、ビッグキャットに近寄るときも、制限があります。「25メートル離れること」というその距離は、他の国立公園の制限である20メートルよりもさらに厳しく、また、囲む車が5台を超えた場合、他の車は100メートルも離れていなくてはいけないという条件付き。実は他のエリアより、マサイマラのほうが厳しいのです。
さらに違反した場合は罰金が課せられるうえ、マサイマラから即刻退場。再び入ることはできません。遥かケニアまでやって来ても、ルールを破ってしまったら、もうマサイマラではゲームドライブはできないということを覚えておきましょう。
ケニアの国立公園ルールのメリット
ルールがあると、レアな動物を見つけたときでも近づけず、良い写真が撮れないなど、残念な気もしますが、そのルールがかえって私達観光客にとってメリットである面もあります。ガイドがタンザニアのンゴロンゴロ自然保護区を訪れたときのこと。3頭の雄ライオンが獲物に食らい付き、30頭を超えるハイエナがその獲物を横取りしようと威嚇しているという、エキサイティングな光景に出くわしました。ガイドの車がその場に来たときには、すでに7台の車が先に良い位置を陣取っていました。もっと近づいて見たくても、先の車はこの光景を見逃すまいと、まったく場所を譲ってくれません。マサイマラのように10分で交代というルールがあれば、そこに集まってきた車が譲り合い、皆がその光景を満喫することができたでしょう。
ほかにも、国立公園外の話ですが、“夜はレンジャーの同行なしにひとりで歩いてはいけない”というルールがあるナイバシャ湖で、ルールを破り、一人でカバの親子の写真を撮ろうと接近した観光客が、母カバに殺されるという事件が起きました。亡くなった方も気の毒ですが、母カバはその後、殺処分。後味の悪い事件となってしまいました。
環境保護のためのルールがあってこそ、皆が気持ち良くサファリを楽しむことができるのです。
次世代もサファリが楽しめる環境を破壊しないためにも、パークルールを忘れずに!