口腔内写真を見ての見解
欠損した前歯を補うように接着された2本の仮歯。その下の部分がかなり大きくやせ細ってしまっているのが確認できると思います。もしここに細いインプラントを入れる事ができたとしても長期維持はもちろん高い審美性を獲得することは不可能です。ど真ん中の前歯2本ですから常に人の目に触れる部分。歯だけでなく、付け根の歯肉の形や色、周囲とのバランスまでもが良くなければ綺麗な口元とは言えません。人前で話すことも憚られ、常に視線を気にして内向的になってしまう方もいらっしゃいます。
欠損部の見た目を補うために接着した仮歯周辺の骨吸収が進んでしまった今回のケース。ただ目の前の問題だけではなく、総合的に悩みを解決する為の治療を提案することが大切なのです。
大きく進んだ骨吸収を補う
今回のケースは骨吸収が進行しすぎてしまい上顎側の骨を一部貫通してしまっています。範囲は狭いですが深く大きな骨欠損のこの部分には、「べニアグラフト」という骨移植・骨造成術を行おうと選択しました。写真の右側はべニアグラフト後のCT画像です。今回は下顎親知らずの付近から2cm×2.5cmの骨を採取しスクリューで固定。固定した箇所は骨補填材などで更に多めに覆い、約5~6ヶ月ほど経過観察をしていきます。その後、移植した骨が定着したことを確認し、インプラント埋入手術を行うことが出来るようになります。このようにインプラントを埋入する前に骨を増大させ、下地を作っておくことを「ステージドアプローチ」と言います。段階を踏み、ベストな状況でインプラントを埋入する為の下準備です。