名将ベンゲルが語る三つの条件
日本代表の監督が交代するたびに、候補者として名前のあがる監督にアーセン・ベンゲルがいる。Jリーグ黎明期に弱小クラブだった名古屋グランパスを強豪へ押し上げ、ヨーロッパで燻っていたドラガン・ストイコビッチを再生させたこのフランス人が、かつて日本代表監督にふさわしい人物として三つの条件をあげている。■ここに仕事があるからという理由で日本を率いるのではなく、日本をもっといいチームにしようという真摯な気持ちを持っていること。
■ゲームに関してひとつの哲学を持っていること。その哲学が国民をも幸せにして、この監督とチームを支えていこうと思わせる人であること。
■いままで培われたものの延長線上にチームを導いてくれる人であること。
ベンゲルが語った三つの条件に、ラウドルップとビエルサを照らし合わせてみる。
真摯な気持ちを抱いているのかどうかは、実際に会ってみないと分からない。しかし、日本との結びつきがどう考えても薄いふたりが、「日本をもっといいチームにしよう」という気持ちをどこまで持てるだろうか。持つことができたとして、どこまで育むことができるだろうか。
どちらも僕には疑問である。日本代表というチームを強くする覚悟において、日本人をまさる人材はいないというのが、個人的な意見だ。
彼らのサッカー哲学についても、疑問符を打たざるを得ない。
ラウドルップもビエルサも、リーグ随一の強豪とは言えないクラブでインパクトを記した実績を持つ。しかし、カタールのクラブで仕事をしている現在のラウドルップは、どんなサッカーをしているのか。彼の哲学と日本代表の未来が、どのように重なっているのか。もっとも肝心な部分が不透明なのだ。
ビエルサも同様である。フィジカルに依存した選手のいないチリ代表を率いて、2010年のワールドカップでベスト16進出を果たした。日本人選手の特徴を生かしたサッカーをするのでは、との期待はある。
だが、彼の哲学が日本のサッカーファンを幸せにするものであるのかどうかは、未知数の領域を出ない。日本人を上回るアドバンテージを彼らが持っているとは、どうしても思えないのである。
日本人スタッフの入閣は必須だ
外国人監督の招聘という方針は動かない以上、重要なのはコーチングスタッフの顔ぶれだ。日本のサッカーや日本人選手、日本人のメンタリティなどを監督にアドバイスする存在として、日本人コーチは不可欠だ。監督と選手の意思疎通を密接にするためにも、日本人コーチは絶対に必要である。監督の仕事を進めやすくするという名目で、ヘッドコーチやゴールキーパーコーチなどのスタッフをすべて外国人で固めるのは無責任な丸投げに過ぎない。
ベンゲルが語った三つ目の条件──継続性を担保するためにも、日本人スタッフの入閣だけは譲れない一線だ。