猫の飼主さんのための詳細な解説
ワクチンについての説明、犬編に続き猫編です。猫はまず「連れて来るのが大変」。それはよく存じております。治療やワクチンの予約を頂いていても、「どうしても連れていけません」とか「逃げました」などの電話がかかってくることもあります。そうした中で定期的にワクチンを打ってくださる飼主さんはたいへんありがたい存在です。
そんな猫の飼主さんのためのワクチン解説です。こちらも犬編と同じく、延々と病名が続きますので、ご容赦ください。
猫こそ予防が必要
猫好きは放っておけない野良猫です
以前相談を受けた方も、自宅に猫を2頭飼っておられました。職場近くにいる病気の猫が可哀想で仕方ないので、近所の獣医科病院で目薬だけもらってこられたそうです。
「目薬がどうしてもさせないのでやり方を教えて欲しい」というご相談で、実際にやって見せました。そのとき何度もお伝えしたことは
「必ず手袋をして目薬を入れてください」
「必ず家に帰ったら手を洗ってください」
「鼻汁などが服に飛んでいる可能性もあるので、着替えもしてください」
ということでした。ご自宅の猫に感染していなければよいのですが。
猫にワクチンが必要な理由に、この「飼主さんの性質」ということもあります。猫の飼主さんは心優しい方が多いので、病気の猫や野良猫につい何かしてしまうようです。本当に拾って連れて帰ってしまう方もあります。その際に家庭内で感染が広がることが多いのです。
猫の感染拡大の疫学
更に、ワクチンの必要な理由その2は、「猫は外を自由に出歩くことができる」ということです。また、先に述べたような「野良猫はすぐに保護されない」という理由もあります。野良猫が病原体の「保有動物」「病原巣」(生物、土壌、有機物などの中で、病原体が維持され、感受性動物に対して伝播される状態になっている領域のことを指します)となっているのです。
最近はインフルエンザなど世界的な流行をみる感染症が多いので「reservoir」という言葉を聞かれた方も多いと思います。上記の理由で、猫は犬より感染が広がりやすく、また病原体を保有しながら生存している個体も多いのです。
もしその感染症で保有動物そのものが死んでしまったら、拡散は起こりません。一番問題なのは鼻水や眼やにを出しながら、接触する猫に病気をうつしていく猫がいることです。
残酷な話ですが、病原体も一気に増殖して個体を殺してしまっては外に出ていくことができません。できるだけ感染の機会が増えるように、やや弱った状態で猫を生かし続けているのです。
また、理由その3として、猫は犬よりワクチン接種率が低いので、集団免疫が確立しておらず、流行の阻止が難しいということがあります。「外に出さないように飼っています」といいながらも、うっかり外に出してしまったあなたの愛猫が、こうした病気を保有する猫と接触したらどうでしょうか。
どんな病気を予防するのか
まず、猫の伝染病についてのお話です。【】内は別名と略称です。猫の伝染病はいろいろな名前で呼ばれてることが多く、混同しやすいのでできるだけ多く記載しました。○はワクチンのある病気、×はワクチンのない病気です。本当は表を作成したのですが、この編集ツールで表が表示できないのでやや見にくくなりました。申し訳ありません。
猫の伝染病一覧
- 猫カリシウイルス感染症 【猫インフルエンザ・FCI】(カリシウイルス) ○
- 猫ウイルス性鼻気管炎 【猫ヘルペスウイルス感染症・FVR】 (ヘルペスウイル ス ) ○
- 猫汎白血球減少症 【猫パルボウイルス感染症・猫ジステンバー・猫伝染性腸炎・ FPL】(パルボウイルス) ○
- 猫白血病ウイルス感染症【FeLV 】 (オンコウイルス )○
- 猫免疫不全ウイルス感染症【FIV 猫AIDS 】( レンチウイルス )×
- 猫伝染性腹膜炎 【FIP】(コロナウイルス) ×
- 猫クラミジア感染症(ネコクラミジアChlamydophila felis ) ○
予防したい病気
しかし、以前はワクチン予防のできなかった病気も、予防できるようになっています。少なくとも、この中で猫カリシウイルス感染症・猫ウイルス性鼻気管炎・猫汎白血球減少症は予防したいものです。日本のメーカー、海外のメーカーとも、代表的なワクチンはすべてこの3種のウイルス感染を予防するようになっています。
京都微研の「フェラインCPR-NA」、共立製薬の「フェロバックス3」が代表的な製品名です。また、この3種に加え、猫白血病ウイルス感染症とクラミジア感染症を予防できる、京都微研の「フェライン7」および共立製薬の「フェロバックス5」という製品も発売されています。
猫の飼育環境・周囲の流行などを考えて、獣医師とご相談のうえ、ワクチンの種類を決められるのがよいと思います。
(協力:株式会社微生物化学研究所)