要予約の理由
実はこちらのお店、うなぎ仲間から教えていただいた。無計画な自分は翌日には駒込に向かっていた。駒込駅前のアザレア通りを抜け小さな町工場がある静かな住宅街へ、お店の前に到着したが外観は普通の住宅だ。開店は12:00と聞いていたが、暖簾が出ていない。いきなりお宅に押しかけるのも失礼かと思い電話をしてみると、店主が対応してくれた。予約がないと準備をしていない、生きた鰻から調理するので2時間かかるとのこと。詳しい調理の過程など説明していただき納得、待つことには慣れているが出直すことにする。日程を改め、日時と氏名と連絡先を伝えて予約をする。お食事のうな重は4500円とのこと、予約の時に店主と直接食事の内容と予算を相談し旬の食材でお出しするとのことだ。遠いところからスイマセン、うなぎが高くてスイマセンと言う腰の低い店主。さりげない気遣い、おもてなしの心
改めて予約をした時間にお店に向かう、今日は暖簾が出ている。ドアを開けて中に入るとお待ちしておりましたと店主と女将さんに迎えられる。玄関で靴を脱ぐ、普通のお宅だ。玄関右手に厨房、その奥が客席となり、座卓席6席、掘りごたつ式のカウンター3席程度の店内。なんと掘りごたつの中には一人分の湯たんぽが入っている。女将さんのさりげない気遣いが嬉しい。メニューはない、予約時に店主と打ち合わせをした通りだ。カウンター前の調理場では鰻を蒸す工程に入っている。店内を見まわすと昔のお店の写真や手書きの書、宮内庁御用達?いや御用無しだ。いろいろな洒落、遊び心がいっぱいなのだ。店主と話しをしながら出来上がりを待つ、飽きることはない。生蒸の蒲焼にこだわる
一般的な蒲焼は裂き、白焼き、蒸し、本焼きの工程となるが、生蒸では、裂き、蒸し、本焼きとなり、蒸の前の白焼きの工程が無い。江戸時代からの伝統的な調理法で鰻に張りと艶が出るのだそうだ。鰻が蒸しあがり、本焼きに入るといままで話をしていた店主が焼台の前で真剣な顔つきになる。白焼きの工程が無いため、骨が当たるのだそうで、鰻の小骨を丹念に抜いている。女将さんが店主の作業に合わせてお重を準備したり、飯を盛ったり、息の合ったサポートをする。こうして、うな重が出来上がっていく。なんとも絶妙な美しい蒲焼
うな重が登場。綺麗な色と照り、身の姿が美しい。皮は薄く柔らか、身はやや厚めで表面をややパリッと仕上げてある。ミルフィーユ状態の皮と皮下のゼラチンと身が口の中で溶けていく。タレは醤油系あっさりとして、フワッとトロッと柔らかすぎず、適度なボリューム感。なんとも絶妙なうな重だ。ご飯の炊き加減、熱さともちょうど良く、全体バランスのも良い。伝統の職人気質とこだわりの、一焼入魂のうな重でございます。一日10食程度しかできないのも納得だ。大切な日に大切な人と、店主にお任せの旬の食材で一杯やるのもよいかもしれない。■つぐみ庵
住所:東京都北区中里1-29-1
電話番号:03-3823-4591
営業時間:12:00~要予約(定休日:月曜日)
地図:Yahoo!地図情報