1年で一番伸びたチームが頂点に、勝因は全員が成長するサイクル
高校は大学より1年短い3年間というスパンで選手が入れ替わるため、より波乱が起こりやすい環境と言えます。今シーズンも結果的には東福岡が3冠を達成しましたが、春の県大会では修猷館に敗れるという「事件」もありました。あれによって「自分たちもやればできる!」と思ったチームは多かったでしょう。そういう意味で、いろんな刺激も与えてくれた年だったと思います。ただしシーズンを通して振り返ると、大学選手権を制した帝京大学と同じく、この1年で一番伸びたチームが東福岡だったと感じます。
今大会の期間中も、厚い選手層を生かして出てくるメンバーがみな生き生きとプレーして活躍するなど、チーム全員で成長していきました。もし対戦しなかったチームも含めてすべての強豪校ともう一度対戦するとしても、東福岡は戦うごとに力を伸ばし、どんどん差が開いていく一方になるでしょう。
一発勝負をかけるのではなく、チームの土壌として全員が成長していくポジティブサイクルを作り上げたことが、最大の勝因だったと思います。
余談ですが、私が早稲田大学の監督を務めた4年間の中で、大学日本一になった2年目と3年目のチームも、やはり同じような環境がありました。決勝が終わって優勝した後、「もう一回やったらもっと差を開けて勝てるのに」とみんな口々に言っていた。これがまさに勝つチームであり、勝ってなお「まだ行ける」と思えるチームこそ、常勝集団になれるのだと思います。
成熟した大人のチームだった東福岡
優れた判断力が好プレーの原動力に
これも帝京大学と共通するところですが、東福岡の選手はグラウンド以外の部分でも道具を大切にしたり、仲間を大切にしたり、サポートしてくれる人に感謝したりといったことを、きちんとできていました。それもやらされているのではなく、自分たちで素直にやっていたところが印象的だった。成熟した、大人のチームだなと感じました。圧倒的な攻守の源となっていたのが、優れた状況判断力だった。写真はCTB永冨晨太郎 (C)JRFU 2015, photo by RJP Kenji Demura
ニュージーランドの統計データによれば、試合で起こるエラーの8割は、スキルではなく判断のミスから起こるそうです。パスしてはならないところでパスをしたり、当たるべきではないところで当たってしまったり、そうしたことがエラーの要因になっていた。その点、東福岡の選手たちはほとんど判断を間違えませんでした。
いい判断をするからいいプレーができ、ボールがきれいにつながっていく。さらに判断力の土台には、徹底的なトレーニングによって鍛え上げられたフィジカルの強さと優れた基本スキルも備えてました。それらがベースになって、余裕のあるプレーを実現できていたのです。