好き嫌いの原因は狩猟採集時代まで遡る
どうして、好き嫌いは始まってしまうのでしょうか。その原因は、人類の歴史を遥か遡ると、見えてくると言われます。今から数100万年ほど前、私達の祖先となる猿人が誕生して以来、長い間人類はどのように暮らしてきたかというと、「狩猟採集」によってでした。そこで現代人の持っている性質には、人類の歴史の99パーセント以上の期間を占める、この「狩猟採集」という生活様式のあり方が、深く刻まれていると考えられています。
例えば、どうしてヒトは甘く脂質のある食べ物が大好きなのかといえば、狩猟採集時代、次に食べ物にありつけるのがいつになるか分からないため、高カロリーで腹持ちするものが常に重宝されていたからと考えられています。またどうして苦いものが嫌いなのかといえば、苦味は毒を含んでいる場合が多く、安全な食べ物を探し出すことを助けるためだったとされているのです。
狩猟採集時代を生き残るための重要な営みの1つには、この安全な食べ物を探し出し、「食べられるものの範囲を広げる」ということがありました。といっても子供の小さな身体で「新しい食べ物」を試すことは、生死に関わります。大自然に囲まれた環境で、周り目に付くもの何でも口に入れていれば、その子が大人になるまで生き残る確率は、格段に低くなってしまったでしょう。
18ヶ月頃から好き嫌いは狩猟採集時代の生存本能が根付いている
シンプルかつ最も有効な好き嫌い克服法
とはいえ、毛皮をまとい石槍かついでマンモスやらを追いかけているわけでもない現代、今この目の前で駄々をこねる幼児をどうしたらいいの~、と思われるかもしれません。鍵は、シンプルに、とにかく「慣らす」ということのようです。この食べ物は安全で害はないんだよと身体に安心させていくんですね。
例えば、発達心理生物学者のジュリー・メネラ博士によるこんな実験があります。6ヶ月以下の赤ちゃん45人に8日間インゲン豆をすり潰したものを与えてみます。最初顔をしかめて見るからに不味そうな表情をしても、構わず続けることで、8日後には多くの赤ちゃんが、自分から喜んで食べるようになったと言います。
つまり、赤ちゃんの表情などにあまり気をとられる必要はないのですね。それは、歴史の中で深く根付いた生存本能がそうさせているのであって、しばらく食べ続け、その食べ物が安全で必要なものと身体が納得するならば、いずれ慣れて食べるようになるというわけです。とにかくまずは少しでも消化器官に落とし、身体に行き渡らせてみる。すると、身体が必要と納得するならば、しばらくして欲するようになると言います。人の身体には、そんな「必要な栄養を求めるシステム」というのが、備わっているとされています。
またメネラ博士は、こんな実験もしています。お母さんを以下の3つのグループに分けます。
1.妊娠中たくさん人参を食べたグループ
2.授乳中たくさん人参を食べたグループ
3.妊娠中も授乳中も人参を避けたグループ
それぞれのグループのお母さんの赤ちゃんが、離乳食を食べ始める頃を比較したところ、妊娠中と授乳中にお母さんがたくさん人参を食べた1と2のグループの子の方が、3のグループの子に比べ、人参で作られた離乳食をよく食べたそうです。
つまり、「慣らす」というのは、胎児の段階からできるんですね。お母さんが妊娠中からバラエティーのあるヘルシーな食べ物を食べていると、赤ちゃんもそうした食べ物に慣れやすいんです。
>>>では「慣らす」ために、具体的にどんなことができるでしょうか?