肥満・メタボリックシンドローム

甘くて美味しいものは健康に悪い?

「疲れたなぁ」と思ったときに、甘いものを食べると幸せな気分になりますよね。でも、その反面「食べちゃった」という罪悪感にさいなまれることもしばしば。そもそも、甘いものを食べることはよいことなのでしょうか?悪いことなのでしょうか?善悪の両面を考えてどのように生活に取り入れるのかを考えてみましょう。

平井 千里

執筆者:平井 千里

管理栄養士 / 実践栄養ガイド

ケーキを食べる幼女

甘いものを食べると心がほっこりします。でも「体に悪いから食べてはいけない」と言われちょっとした罪悪感もあります。どのように甘いものと付き合っていけばいいのでしょうか。

「疲れたなぁ」そんなときに手が伸びる

「疲れたなぁ」と思ったときにチョコレートを1片、口に放り込んだときの幸せ。これはもう至福のときと言っていいでしょう。小さい幸せですが、ほんわかした気持ちになります。

しかし、「もう1片、もう1片」と食べ進んでいくうちに、チョコレートが1枚なくなっている。よくあること……、などと笑ってはいけませんが、本当によくある話です。

実は、甘いものを食べるという行動には体に良い側面と悪い側面の両方があります。
 

甘いもので心とアタマに潤いを

最初に、体に良い面からお話します。

まず、甘いものの主成分、すなわち糖分は脳の栄養素として活用されます。脳は身体の重量の2%程度と言われていますが、そのエネルギー消費量は18%。脳は燃費が悪いのです。そのため、取り込んだらすぐにエネルギーとして変換できる「糖分」を主な栄養素として使う必要があります。たんぱく質や脂質がエネルギーとして使われているという事実があるため「主な」としましたが、脳のエネルギーの99%は糖分だと言っても過言ではありません。ですから、デスクワークの疲れなどは甘いものを食べると一瞬にして吹き飛ぶのです。

もう1つ「疲れている時に限らず甘いものを食べると幸せな気分になる」ということが挙げられます。「エンドルフィン」という幸せを感じるホルモンが多く出るのです。「幸せホルモンが出るから心がほっこりする」「疲れも吹っ飛ぶ」とてもありがたい効果です。
 

「甘いものを食べるなんて……」という罪悪感を科学する

「そんなに体に良いのであれば、もっと食べてもいいよね?」そう思った人もいるかもしれません。ですが、そんなにうまくはいかないのです。生き物は「快楽」を求めて生きています。「幸せな気分になる」「疲れが吹っ飛ぶ」となれば、甘いものへの欲求が増します。そして、エンドレスに食べ続けてしまいます。これがカロリーオーバーにつながってしまうため「甘いものは体に悪い」と言われるのです。
 

カロリー控えめ甘味料であれば良いのか?

私が20代だった頃、師事していた教授から聞いた言葉です。「最近は“甘さ控えめで美味しいね”というが、甘いものは甘いからこそおいしいのではないのか? 」
日本人は真面目な国民なので「甘いものは好きだけれども、食べ過ぎると害になる」という言葉を信じて、できるだけ甘いものを避けようとしているようにも思います。

そこで、日本で大人気を博しているのが「低カロリー甘味料」です。これにはさまざまな種類がありますが、糖尿病学会の医師たちは「ラカント」「マービー」といった商品名で売られている糖アルコールが血糖値を下げるのに効果的であると言っています。

しかし、甘いものはカロリーが高かろうと低かろうと「クセ」になります。カロリーが低くても量が増えれば意味がなくなってしまうこともあります。また、低カロリーの甘味料を使った菓子等よりも一般の菓子のほうが風味がいいことがほとんどであるため、低カロリー甘味料を使った菓子でガマンした自分を褒める意味で、菓子以外の食べ物を食べすぎてしまうということも往々にしてあるようです。

もう1つ、どの種類の低カロリー甘味料も人工的に作られたものです。加工食品の食べ過ぎはオススメできません。よって、いくら低カロリー甘味料であっても、手放しでいくらでも食べてよいというわけにはいきません。

私が患者様に低カロリー甘味料のお話をする際は、本当にイライラしたときに、低カロリー甘味料を入れたコーヒーを1杯だけ飲む、ほうれん草のおひたしの中に1包だけ入れるなど低カロリー甘味料を使うのは1日1回以下になるようにしてほしいとお伝えしています。
 

運動する前後に甘いものを食べるといいと聞くけど本当ですか?

余談ですが、甘いものの話が出ると、必ず「運動する前は甘いものを食べたほうがいいのか?」という質問が出ます。これはタイミングが非常に大事です。運動するときは、筋肉に含まれているグリコーゲンが必要ですが、グリコーゲンの素は糖質です。ですので、試合の直前に糖質を補給するのではなく、補給した糖質が筋肉に沈着する時間の余裕を持って補給するのが良いとされています。

そういう意味では、糖質であれば何でもいいので、おにぎりやパン、麺類、イモ類といった甘くない食品で糖質を補給するほうが必要量を食べやすいのではないかと思います。

また、試合後も試合で使ったグリコーゲンを補給するために、糖質を多めに摂るようにすると疲労回復が早いです。
 

すべては食べる量とタイミング

甘いものを食べたいという気持ちは良い面と悪い面があることをお伝えしました。しかし、「ストレス解消のために甘いものを」と言っても、体に悪影響を与えないように食べたいものです。そこで、甘いものを食べるときの5つのルールを記します。
  • 1日1回以内で抑える
  • お日様が出ている間に食べる
  • 食べる量は1日分が10円玉1個くらいの大きさと心得る
  • 「ハレ」の日やご褒美は食べてヨシ
  • 食べ過ぎたときは、前後で量を調節(ハレの日やご褒美も含む)
せっかく甘いものを食べるなら、体にも心にも幸せをより多く感じられるような食べ方をしたいものですね。

 
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