「人生の多様性」
ある精神科医によれば、日本で鬱になる人は「他人と同じように出来なくなった」と苦しむが、欧州で鬱になるのは「他人と同じになってしまった」と苦しむ人だという。国によって価値観にこれほどの違いが出る一例だが、それは映画においても言えること。
北欧映画では、主人公が非業の死を遂げたり、観客が耐えられないような結末を迎えるものもある。思い通りにいかない現実を描くのが北欧映画の持ち味であり、不死身のヒーローが現れ、最後はみんな揃ってハッピーというハリウッド映画とはひと味違う。
「人間の不条理」
世の中は善と悪というような簡単な尺度では測れない。罪を犯した人間に取り憑く恐怖、平凡な人の心に潜む悪など、人間とは外面と内面にズレを持つ生き物だ。こうした点に光を当てるのも北欧映画の特徴だ。決して大スペクタクルでもない物語の中に、人生の難しさや人間心理の複雑さが描かれ、人間とは何かを突きつけてくる。
「リアリティ」
世の中には派手に活躍している成功者がいる。何かとトラブル抱えながら生きている私たちにとって、そうした人々は羨ましいものだ。しかし北欧映画ではそんな成功者が主人公になることはない。人生がうまく行かない平凡な人が様々な問題に直面する姿が描かれている。失敗を繰り返す主人公の前にわずかな光が見えたあたりで物語は終わるのだが、だからこそ説得力がある。
現代のハリウッド作品が楽しませるのが特徴であるなら、北欧映画の特徴は、考えさせ、気づかせる点にある。
日本とは一風変わったアニメ作品
北欧映画の素晴らしさは実写だけにとどまらない。スウェーデンのグラフィックデザイナー、オーレ・エクセルが遺した作品を、マックス・ワイントラウヴがアニメーションとして完成させた短編集「オーレ・エクセル イン モーション」は特筆ものだ。たった数分の中に、人間の持つ喜怒哀楽が優しくそしてシュールに描かれている。子供が見ればなおのこと、大人も希望を感じさせられる作品だ。アニメでは日本が世界一と言われるが、それでもなお、見る人に訴えかけ、深い余韻を残す作風から学ぶものは多いだろう。
北欧映画祭「ノーザンライツフェスティバル2015」は1月31日から2月13日まで、渋谷のユーロスペースまたはアップリンクで開催される。
ノーザンライツフェスティバル2015のサイト