政府の早い対応の真意は?
政府が対応を急ぐ理由の一つとして、海外で消費されてしまう日本人のお金を国内で落としてもらおうという考えがある。しかし海外まで行って馬券を買うファンなど微々たるものだ。やはり大きな理由は、海外のG1レース(=最高グレードのレース)を日本で売れば、1レースあたり数十億円の単位の売上げが見込まれる点だ。さらに凱旋門賞など、日本で人気の高いレースともなれば「日本ダービー」や「有馬記念」といった日本の国民的レース並みに売れることも期待される。
それなら人気馬が不在となることのダメージを補って余りあり、しかも海外の人気レースを日本にいながら買えるのだから、まさに新しいG1が丸々増えるようなものだ。
この動きにはさらに大きな理由がある。
JRAが事実上のブックメーカーとなる
海外のレース(=スポーツ、競技)の投票券を日本のJRAが売るということはJRAが「ブックメーカー」となることを意味している。「ブックメーカー」とは、スポーツをはじめとする競技の結果を予想し、掛け率(オッズ)を決め、投票券を発売する事業。つまりスポーツベッティングなどを行うギャンブルの主催者だ。イギリスを代表として欧州には政府公認のブックメーカーが数多く存在する。
日本の大相撲も賭けの対象となっているし、2020年の夏季五輪「招致レース」もギャンブルの対象となっていた。当然のことながら競馬も対象だ。
つまりJRAが海外競馬の馬券を売るということは、JRAが「競馬に限定したブックメーカー」になることと同義なのだ。
カジノより先にブックメーカーが誕生?
今回の法改正のポイントはそこにある。現在のところ、スポーツを賭けの対象とするギャンブルは日本の法律では認められておらず、唯一、国内のサッカーを対象したサッカーくじ「toto」が行われている程度。そんな日本でいきなりブックメーカーを合法化するのはハードルが高い。
様々な反対に遭い、合法化が遅れ気味のカジノとは違い、海外レースの馬券を国内レースと同じシステムで売るだけなら形としては何も変わらない。
そこでまず競馬限定でブックメーカーとしての壁をクリアし、後からその対象を広げるのであれば、新規に法律を作るよりもはるかにハードルが低い。
日本版ブックメーカー誕生が、にわかに現実味を帯びてきたと言えるだろう。