高齢者住宅(2)介護付き有料老人ホーム:
ライフコミューン川崎の事例
介護付き有料老人ホームは、施設内で手厚い介護サービスが受けられるのが特徴です。ライフコミューン川崎は、介護付き有料老人ホームの中でも大規模な施設になります。地下1階地上6階建てで、定員217名の介護居室191室のほかに、自立した高齢者向けに定員78名で居室54室の「タイムレスフロア」もあります。ナースコール付きの介護居室は、個室165室(17.08~116.01平方メートル)、夫婦居室26室(35.21~116.01平方メートル)で構成され、室内にはトイレや洗面台のほか、介護ベッドや収納、テーブル・イスなどの家具、テレビやエアコン、カーテンなどが設置されているので、身の回りのもの持ち込めばよいようになっています。
介護居室のモデルルーム(個室)
自立した高齢者向けの「タイムレスフロア」の居室は、鍵付きで個室30室(34.16~116.06平方メートル)、夫婦居室24室(47.31~116.06平方メートル)で構成され、夫婦居室の比率が高いのも特徴です。室内には、介護居室と異なり、浴室やキッチン、インターホン、洗濯機置き場、シューズボックスなどが設置されています。
タイムレスフロアDタイプ(個室)
タイムレスフロアDタイプ(個室)の浴室・トイレ・洗面所
タイムレスフロアの費用は、34.16~36.34平方メートルのタイプで、入居一時金が468万円、月額利用料が16万400円となっています。これには、週1回の居室清掃費用などが含まれています。
このほかに、利用した介護サービスに応じた費用が発生します。介護付き有料老人ホームの場合は、スタッフが24時間体制で常駐し、施設内の介護サービスを受けるのが基本です(施設によっては外部の介護事業者が介護サービスを提供する場合もあるが、入所者が自由に選択できるわけではない)。
特定の部屋を借りる契約の賃貸住宅とは異なり、介護度に応じて部屋を変わることもありますが、介護が必要になった場合に、タイムレスフロアから介護棟へ移ったり、夜間の医療行為が必要になった場合に、首都圏内の他のライフコミューン施設から24時間看護職員が常駐するライフコミューン川崎に移るといったことも可能です。
高齢者住宅(3)特別養護老人ホーム:
クロスハート幸・川崎の事例
特別養護老人ホームは、一般的に特養(以下、特養)といわれています。サービス付き高齢者向け住宅や有料老人ホームが民間の事業者で運営されるのに対して、社会福祉法人や地方自治体などにより運営される介護施設です。介護保険制度の要介護度が高く、寝たきりまたは認知症のために常時介護を必要とする人で、在宅で介護を受けることが難しい高齢者が対象となります。
特養は費用が比較的安いため、入所待ちが多いことでも知られています。これからは新規の入所基準が厳格化され、要介護3以上が対象になります。
クロスハート幸・川崎は、川崎市立の小学校の跡地を借りて、開設された特養です。特養のほかに、ショートステイと小規模多機能居宅介護が併設事業として運営されています。
特養はユニット型と呼ばれる個室タイプのものが増えています。10人前後のグループを一つのユニットとして、リビングなどの居住空間を提供するものです。クロスハート幸・川崎は、川崎市内の利用者の居住費負担を軽減するために、4人部屋などの相部屋タイプである従来型のものを多く用意しているのが特徴です。
4人部屋
個室
介護浴室
なお、ここで紹介した3つの高齢者向けの住宅や施設は、ひとつの事例にすぎません。費用はもちろん、付帯設備や受けられるサービスの内容は、それぞれ様々です。例えば、クロスハート幸・川崎には、1階に地域住民も利用できるおしゃれなカフェや図書コーナーがあり、明るく開放的な共用部がありますが、それは特養の中でも珍しいということです。
クロスハート幸・川崎のカフェコーナー
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3つのいずれの高齢者住宅でも、趣味や文化的行事、外出、機能回復的なアクティビティが行われています。ただし、日本の場合は、介護面の条件が最も緩いサービス付き高齢者向け住宅でも、住宅事業者より介護や医療の事業者が運営する比率が高く、手厚い介護を特色とする高齢者住宅が多いのが実情です。
アクティブシニアに対して予防介護的な観点でサービスを提供する、アメリカのリタイアメント・コミュニティのような住宅が今後増えるのかどうか、注目したいと思います。
→ 前回の執筆記事「アメリカの高齢者住宅が日本と違う点は?」も御覧ください。
○取材協力:高齢者の住まいと暮らしの支援センター