株式戦略マル秘レポート/戸松信博の「海外投資、注目銘柄はここ!」

原油暴落がもたらす10年に数回の投資機会

原油価格暴落で石油関連株も暴落しています。ここからさらに下落が続くようなら、来年には原油暴落がもたらす10年に数回の投資機会が訪れる可能性があります。

戸松 信博

執筆者:戸松 信博

外国株・中国株ガイド

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原油価格暴落で石油関連株は大暴落

暴落する米国のシェールガス関連銘柄

暴落する米国のシェールガス関連銘柄

ご存知のように原油価格が暴落しています。上は大打撃を受けている米国に上場しているシェールガス・オイルを掘削する関連銘柄の一部です。今回の原油安は、サウジアラビアを盟主とする旧利権団体、OPECによる新興産業のシェール潰しという陰謀説も囁かれます。価格が50ドルを恒常的に下回れば、世界からシェールガス・オイルの生産は消えてしまいます。

シェールガスの大産地は米国に3つあり、テキサス州ミッドランド近辺の8万6000平方マイルに及ぶパーミアン盆地、ノースダコタ州バッケンシェール、テキサス州イーグルフォードに拡がる各シェール層です。上のミニチャートの上部4銘柄は特にパーミアン盆地での開発で知られています。

そこでは「シェールブーム」で全米から人、モノ、金の集まるラッシュとなってきました。年間数兆円が開発に注ぎ込まれているのですが、バッケンシェールやイーグルフォードよりも岩盤が堅い為に掘りにくく、質も良くないと言われます。コストの高い地域になるほど、原油暴落で開発中止となるだけで済まず、開発用に乱発されたジャンク債(中小石油会社の発行した社債)の不良債権化が、州を超えて米国のウォール街を揺らす恐れもあります。

他産業の充実している米国以上に深刻なのは経済を原油輸出に頼りきっているロシアです。その株式市場とルーブルは下落が止まらず、ロシア中央銀行は大幅な利上げ(10.5% ⇒ 17.0%に)を実施し、逃避する自国通貨を守ろうとしました。

このままいけば超高金利と欧米制裁で市民生活は麻痺し(すでに日用品がまともな値段で手に入らなくなっている模様です)、ロシア通貨危機からさらには政権転覆という事態もないとは言えないかもしれません。ドイツなど欧州の実態経済への悪影響、他の新興国の通貨・株安という波及も心配されます。

原油暴落がもたらす10年に数回の投資機会

株式市場、金融市場(米国のエネルギー関連高利回り債券が暴落中)にまで嵐を巻き起こしている原油相場ですが、25年という長期で見れば以下のような粗い動きは度々訪れてきました。

過去約10年の間に原油価格の暴落は2度ほどあった・・・

過去約10年の間に原油価格の暴落は2度ほどあった・・・

上の原油価格の長期チャートを見ると、今回と同じような暴落を10年少しの間に2度ほど見たような気がします。だとすれば、やがて今回の暴落は10年に2~3度あるかどうかの(優良な石油株への)投資好機となる可能性も、大変高いと思います。

仮に中東の陰謀説が本当であるとしても、彼らの狙い通り他の大産油国であるロシアと米国(=シェール層)を原油安で潰したとしても、それで中東が唯一の大産地として栄え続けることなどできないでしょう。たとえ原油価格40ドルで我慢をし続けたとしても、世界のシェール層には無尽蔵の石油ガスがあるのは分かっており、それを掘る技術も確立されました。米国だけでなく東欧や中国にもそれ以上に眠っているとも言われます。価格が70ドルに戻ればたちどころにプロジェクトは再開されます。

絶好の投資機会に?

原油暴落がもたらす10年に2~3回の投資機会

原油暴落がもたらす10年に2~3回の投資機会が訪れるかもしれない・・・

一方、価格を50ドル以下に置き続けると、サウジの各油田ベースではそれでも黒字が出ますが、国家としての財政は高い石油価格による収入に頼り切っているため、90ドル以上でないと財政均衡が保てないと言われます。産油国は資源のない日本と正反対で、油が出るから他の産業や技術を育てずともにやって来られました。

他に黒字を生む産業がないため、石油が90ドルを超えないと財政は破綻する可能性が高いのです。従って我慢比べの末に安値コントロールをいつか諦めざるを得ず、そうなるとたちどころにシェール開発が各地で復活すると思います。丁度株価が暴落したあと買われ始めれば、一気に買いが殺到するようなものです。

世界は2000年以降の新興国による需要増大によって、70~80ドルの原油価格にも慣れました。その価格帯で消費者も企業も充分居心地良く、むしろシェールで安定供給された方が良いのだとも思います。不安定な中東一地域に世界中が頼る構図(これをOPECは復活させたい)は過去のもの(正確には1970~2010年までの現象)となるでしょう。これはまるで大口の投機家が買い板に無理をして売り玉をぶつけ、株価を低く抑え込んでいるようなもので、いずれ玉が尽きて元の価格に戻るのと似ていると思います。

中東が世界中に石油を供給していた時代、1990年代までは原油価格は20~30ドル台で済んでいました。しかし2000年になって数十億人口の新興国が台頭して来ると、その需要増大に供給が耐えきれずに145ドルまでいきました。

そこにシェール革命が加わって80ドル前後でここ数年は落ち着いてきました。供給と需要のバランスがとれた価格だと思います。

現在、シェールブームと中東の無理をしたフル生産の重なった結果、40ドル台となりそうです。これでシェールが生産をストップして中東だけの供給となれば、また新興国の需要圧力に耐えきれず145ドルの悪夢へと向かうか、前述のように安値で中東が破綻するかのどちらかと思います。結局シェールと中東が適切な供給をすることで70~80ドルが落ち着きどころになると思います。まだ原油価格は下がる余地はあり、今すぐの石油株投資はお勧めできません。しかし来年にそのチャンスは来ると思います。そして、底からの戻りは非常に大きなものになるとも思います。

米国株だけでなく、日本株でも暴落を狙える銘柄はあります。三井海洋開発<6269>、日本海洋掘削<1606>、国際石油開帝石<1605>、三井物産<8031>などです。もちろん、全ては石油価格の反転が条件で、万が一原油30ドル時代が10年も続くのであればこのシナリオはなくなりますが、その可能性は低いと思います。

【関連記事をチェック】
原油先物価格、WTIとは?(2016年最新版)

参考:グローバルグロースレポート

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