NHK杯とは、フィギュアスケートのグランプリシリーズ6大会の最後の大会で、この大会の結果によって、2週間後にスペイン・バルセロナで行われるグランプリファイナル（グランプリシリーズの決勝戦）への出場選手がすべて決定します。
とはいえ、グランプリファイナルがすべてというわけではありません。グランプリファイナルへの進出が難しい選手たちでも、ここに出場している選手たちは皆、各国代表で、世界選手権などでも活躍してきた経験を持っている、世界有数のトップ選手たちばかりです。
男子シングルと女子シングルでは、
ファイナルに向けた熱い思いが交錯
男子シングルでは、連日報道されているように、グランプリシリーズ3戦目の中国杯で負傷した羽生結弦選手の動向が気になりますが、昨日の公式練習では、4回転を含むさまざまなジャンプを決めていました。まだ両脚に痛みが残っている状態のため、ショートプログラム『バラード第一番』（ショパン）のなかの4回転を、プログラム後半ではなく前半にして戦います。フリーは『オペラ座の怪人』。中国杯では満身創痍の中で滑り切りましたが、負傷のためにプログラムの全貌がまだはっきりとはわからないままでした。今回はどんなファントム（怪人）を見せてくれるのか、期待が高まります。今大会出場者でグランプリファイナルにもっとも近いのが、無良崇人選手です。グランプリシリーズ2戦目のスケートカナダで優勝しているため、今大会は4位以上で、彼にとって初めてのグランプリファイナルが決まります。昨シーズン、ソチ五輪に行けなかった経験から、すでに春先には「今シーズンからピョンチャン五輪をめざしていかないと」とコメント。2018年の五輪をすでに見据える日々を送ってきました。ショートプログラムはダイナミックな『カルメン』、フリーは『オペラ座の怪人』です。特別な女性への愛情を表現するこのフリーでは、2013年に結婚した妻や1歳半になった娘さんのことを思うこともあるそうです。
フリーの演技は、ショートプログラムの順位の昇順で行われるので、羽生選手と無良選手が続けて『オペラ座の怪人』を見せることになる可能性も高いです。同じミュージカル（映画）からの選曲ですが、2選手それぞれの味わいを感じるでしょう。
もう1人、初めてのグランプリファイナルがかかっているセルゲイ・ヴォロノフ選手（ロシア）、昨シーズンでの引退をやめ、今シーズンも戦いの場に戻ってきたジェレミー・アボット選手（アメリカ）、日本からもう1人出場する村上大介選手にも注目です。
女子シングルでは、宮原知子選手、グレイシー・ゴールド選手（アメリカ）、村上佳菜子選手の3人が、現在ほぼ横一線のポイントを持って、グランプリファイナル進出を目指しています。
宮原選手はシニア2シーズン目の高校2年生。147センチと小柄ではありますが、3回転＋3回転をきゅっと決めたり、4分間全力で滑るフリーも最後までスタミナを切らさずに演じたりと、力づよい面も持っています。スケートカナダでの３位が自信になったとのこと。
今シーズンの目標のひとつである「グランプリファイナルに進出したい」という思いをかなえられるでしょうか。
ゴールド選手は、ソチ五輪4位の元気な演技が魅力な選手。コンビネーションジャンプの1つ目が危うくなっても、果敢に2つ目のジャンプに臨んで成功させる、気持ちの強さもプログラムのそこここで見られます。彼女のフリーは、またまた『オペラ座の怪人』です。
そして、今シーズン『オペラ座の怪人』と言ったら、村上選手。ショートプログラムでは女性のクリスティーヌ、フリーでは男性の怪人と、2プログラムで1つの『オペラ座の怪人』ストーリーを演じ分けます。今シーズンオフには、苦手意識のあったダブルアクセルを1回転ジャンプから確認し直し、跳び方を変えて安定させてきました。20歳になった今、日本女子シングルを引っ張っていくという気概も感じさせる今シーズンです。
さらに、ポリーナ・エドムンズ選手（アメリカ）も表彰台の順位によってはグランプリファイナル進出が可能になっています。加藤利緒菜選手も、出身地・大阪で開催されるNHK杯で、初めてのグランプリシリーズ出場を果たします。
