歯科インプラント/歯科インプラントでのトラブル・失敗事例

こんなときどうする?インプラントトラブル「揺れ」編

インプラントトラブルシューティング。第1回はインプラントの揺れについてです。歯科インプラントが身近になってきたからこそ、誰にでも起こる可能性のあるトラブルについてしっかりと把握し、正しい対応が出来るようになることが大切です。

梅田 和徳

執筆者:梅田 和徳

歯科医 / 歯科インプラントガイド

歯科インプラント治療は生体に人工物を埋め込み機能回復させていく治療です。長い間使用していくうちに何らかのトラブルが起きることもあります。定期的メインテナンスで発見されることもありますが、日常生活のなかでご自分で「おやっ?」と気づき心配になることもあるでしょう。

そんな時のために、身近に起こり得るインプラントトラブルについて解説していきたいと思います。

インプラントが揺れている?

インプラントの揺れを確認するレントゲン写真

揺れの原因を推測する為にレントゲン写真はかかせません。

口の開閉といった垂直的な方向だけでなく、食べ物をすり潰したりして360度様々な方向からものすごい力が加わるのが咬合です。歯科インプラントは人工物ですので、そのあらゆる方向にかかる強いストレスを小さいインプラント体で受けています。

「揺れ」といっても様々です。以前にも書いたように、インプラントは基本的に”フィクスチャー”と”アバットメント”そして”上部構造”といった3つのパーツから構成されていますので、2つの連結部があります。そのどちらが揺れているのかを正確に判断し、正しい対応をしていかなければなりません。

対応の仕方を間違えると、大切な連結部をダメにしてしまうこともありますし、作り直しによる費用が発生したり無駄なストレスを受けてしまうことにもなります。まずは揺れの種類を正しく判断すること重要です。

揺れの種類の見極め

1.上部構造とアバットメントの間での揺れ
ねじ固定または接着固定で止まっていますので、そこが緩んでいる状態です。ネジの場合は締め直し。接着の場合は接着し直しで簡単に対応できることが大半です。ただし、揺れて周囲に炎症がある可能性があるので、レントゲンで骨吸収の有無を確認し、しっかり清掃を行ってから再度装着することが重要です。

2.アバットメントとインプラントの間での揺れ
大半のインプラントはアバットメントをネジで固定しています。1と同様に締めなおせばいいのですが、ネジそのものが変形していたり折れたりしてないかどうかを確認しなければなりません。こちらもレントゲンで骨吸収の有無を確認し早期に対応することが望まれます。

3.インプラントと骨の間の揺れ
ネジではなくオステオインテグレーション(歯科インプラントと歯槽骨の結合)が壊れている状態。つまり、残念ながらインプラントは1度撤去しなければならないことが多くなります。この場合、炎症はもちろん、咬んだ時に痛みを生じたり、歯周ポケットから出血や排膿があることが多いと思いますので、事前診査を慎重に行ってください。大切なのは気になる症状が有る場合は早期に歯科医院を受診することです。

インプラントの揺れをどう考えるか…

一口に「揺れ」と言うとマイナスのイメージでしょう。しかし私はそうは思いません。歯根膜というクッションのない歯科インプラントに対して、平均40~60Kgもの咬合力というものすごい力でストレスをかけているのですから、どこかでその力を逃がしてくれなければなりません。それが、1や2のねじ止め部分の揺れとなってあらわれ、その緩みこそが歯科インプラント治療で最も大切なオステオインテグレーションを助けているのです。

揺れてるな?と感じたら、重篤な問題になる前に早く歯科医院を受診して、早期に対応されてください


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